発達障害と睡眠障害の合併は非常に多い。特に,不眠症,睡眠時無呼吸症候群,レストレスレッグス症候群,過眠症の合併が多いとされる
注意欠如多動性障害(ADHD)患者は眠気の問題を有することが多く,その一部はADHDの病態そのものを反映している可能性がある
睡眠障害とADHDは類似した症状を呈するため,睡眠障害がADHDと診断されることや,逆にADHDが睡眠障害と診断される可能性があり,常に両者の関係を念頭に置く必要がある
近年,発達障害と睡眠障害の関連性が注目されている。発達障害に睡眠の問題を多く認めることは以前より知られており,その原因は生来性の睡眠障害,発達障害に併存する睡眠障害,発達障害に合併する精神障害による睡眠障害,発達障害の薬物治療に伴う睡眠障害など多岐にわたる。注意欠如多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder:ADHD)児の25~50%が睡眠に関する何らかの問題を抱えていると言われており1),成人の場合は半数以上が問題を有しているとの報告がある。
過去には,主に夜間の睡眠障害に焦点が当てられ,その診断・治療に目を向けられることが多かった。しかし近年,睡眠外来を受診する患者の中でも,発達障害,特にADHD患者が眠気を主訴に来院するケースを多く経験する。また,過眠を主訴に来院する患者の中には,ADHD傾向を持つ者も多く,両者は密接に関連していると考えられる(図1)。
本稿では,生来性もしくはADHDに併存しやすい睡眠障害について,特に過眠症に焦点を当てながら述べていきたい。過去の研究のほとんどが小児を対象としており,成人におけるADHDの睡眠障害に関する研究は数少ないため,主に小児の研究から各睡眠障害について解説する。
小児におけるADHDの睡眠について調べたメタ解析によると,本人や親による質問紙を用いた主観的な評価で,ADHD児はコントロール児と比較し,入床への抵抗,入眠困難,中途覚醒など,睡眠に関する多くの問題を有している。客観的に睡眠を評価する終夜睡眠ポリグラフ検査(polysomnography:PSG)やアクチグラフでも,睡眠効率の低下,睡眠段階シフトの増加,睡眠時間の短縮が明らかとなっている2)。また,ADHDの場合,ADHD治療薬そのものが不眠を引き起こすことや,ADHDに合併する精神障害(不安障害など)が不眠を引き起こすこともある3)。
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