日本腎臓学会、日本集中治療医学会、日本透析医学会、日本急性血液浄化学会、日本小児腎臓病学会は、5学会合同で昨年12月、『AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016』を刊行した。急激な腎機能低下を伴うAKIは、2000年代になって腎臓内科医、集中治療医、循環器医など異なる領域の専門家による共同作業から提唱された比較的新しい概念で、本邦で診療ガイドラインが作成されたのは初めて。
同ガイドラインでは、AKIの疾患概念、診断基準、発症リスク、発症場所や病因によって異なる対応をすべきか、早期診断法、予防、治療、透析の開始・終了時期、長期フォローアップなどについてまとめている。また、「小児」と「高齢者」について個別に章を設け、それぞれの対応に言及しているのが特徴だ。
1章では「AKIという疾患概念と臨床診療における重要点」を取り上げ、「AKIはさまざまな病態を背景として発症する疾患スペクトラムの広い症候群であり、常に原因の鑑別と可逆性を除くことが求められる」と強調している。疾患概念は原因と症状別に図のように分類され、腎灌流低下(腎前性)には補液、組織障害(腎性)にはステロイド療法や血漿交換、尿路閉塞(腎後性)には泌尿器科医による閉塞の解除など原因によって推奨される対応は異なる(表1)。
AKIに関しては、RIFLE基準、AKIN基準など、国際的にもさまざまな診断基準が作成されてきた。同ガイドラインでは、生命予後の予測に優れている、国際腎臓病ガイドライン(KDIGO)基準(表2、12年作成)を用いることを提案している。
残り1,792文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する