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(12)高血圧─運動強度が高すぎる 生活習慣改善の指導をしても行動変容に結びつかず,漫然と通院している[特集:困った患者の生活習慣指導]

No.4722 (2014年10月25日発行) P.68

編集: 津下一代 (あいち健康の森健康科学総合センター センター長)

松下まどか (あいち健康の森健康科学総合センター健康開発部主任専門員)

登録日: 2016-09-01

最終更新日: 2017-04-20

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  • 病歴(検査データは異常値のみ)
    52歳,女性。主婦(夫,高校生の息子と3人暮らし)。
    身長163cm,体重80kg,BMI 30.1。10年前に感冒のため受診した医療機関で高血糖(随時血糖320mg/dL,HbA1c 7.5%)を指摘。肥満も伴っていたため,血糖降下薬(ビグアナイド)内服開始とともに,食品交換表を用いた食事指導による減量を指示された。しかし,食事指導を何回も繰り返したが体重増加は続き,血糖コントロールも悪化。3年前には2週間教育入院を行った。入院中,病院食を食べていると血糖値は良好な値を示した。また入院中,間食をしている姿もスタッフに目撃されている。現在BMIは30.2で,ここ数年HbA1cは9~10%台が続いており,治療方針を変更せざるをえない状況となっている。体重増加に伴い,最近になって膝関節痛も出現した。定期受診は続いており,医師の指示に拒否的な反応はみられないが,正確に理解しているかは不明。糖尿病性合併症,内分泌学的異常なし。
    家族歴:父親が2型糖尿病,70歳で脳梗塞。両親,兄弟,夫と息子も肥満。飲酒・喫煙:なし。
    運動:膝関節痛があり,ここ数年できない。食生活:高校生の息子がおり,油ものが多いと自覚している。

    1. 医師はどのような点に困っているのか?

    問題点
    ▶生活習慣改善の指導を繰り返し行っているが,効果がみられない
    ▶治療方針の変更をせざるをえない
    ▶生活習慣改善のないまま薬物療法の変更を繰り返してよいのだろうか?

    薬物療法の種類によっては,生活習慣改善のないまま使用すると体重増加をきたす可能性が高く,注意が必要である1)
    この患者は,食習慣に問題があることが病歴よりわかっており,薬物療法の追加や変更を考慮する場合でも,まず第一に生活習慣の改善が重要である。

    2. 困難となる患者の状況をどう整理するのか?

    (1)患者─医師の信頼関係

    このクリニックに10年来通院しており,また受診時の受け答えからも拒否的な発言はみられないが,踏み込んだ内容については話さない。入院時の状況より間食など食生活に問題があることはわかっているが,そのことに関して医療者と話をしてくれない状況である。

    (2)減量に対する動機づけの低さ

    肥満,高血糖ともにあまり気にしている様子はなく,減量の必要性についての理解や減量への意欲を感じられない。

    (3)糖尿病,食事療法に関する知識

    糖尿病教室,食品交換表を用いた食事指導を繰り返しており,その場では理解しているように振る舞っている。外来でも「教えられた通りに生活している」と答えるが,理解し実践できているかは定かではない。

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