ロイコトリエンはヒスタミンとともにアレルギー性鼻炎の病態を形成する主要な化学伝達物質である
アレルギー性鼻炎の主要症状はくしゃみ,鼻漏,鼻閉であり,鼻閉の発現にはロイコトリエンが関与している
ロイコトリエン受容体拮抗薬はシステイニルロイコトリエン受容体に選択的に結合し,ロイコトリエンの作用を抑制する
アレルギー性鼻炎治療において,ロイコトリエン受容体拮抗薬は花粉症の初期治療や鼻閉を訴える中等度および重度の症例に推奨されている
ロイコトリエンは,ヒスタミンとともにアレルギー性鼻炎の病態を形成する主要な化学伝達物質である。強力な気管支平滑筋収縮作用を有する物質として注目されていたslow reacting substance of anaphylaxis(SRS-A)の本体がロイコトリエンCであることが1979年に発見され1),ロイコトリエンの生成経路や構造を解明したSamuelssonは1982年にノーベル医学・生理学賞を受賞している。
ロイコトリエンは気管支平滑筋収縮作用以外にも,血管透過性亢進,気道粘液分泌,好酸球遊走など,アレルギー炎症に関わる様々な作用を有する。そして,ロイコトリエン受容体拮抗薬(leukotriene receptor antagonist:LTRA)が喘息のみならずアレルギー性鼻炎にも効果を有することから,喘息とアレルギー性鼻炎に共通の病態が想定され,“one airway, one disease”の概念が提唱された2)。
ロイコトリエンは産生細胞の細胞膜を構成するアラキドン酸からプロスタグランジンとともに生成される。この生成経路は,いくつもの流れとなって落下する滝(cascade)になぞらえて,「アラキドン酸カスケード」と呼ばれている(図1)。
すなわち,アラキドン酸から5-リポキシゲナーゼによって生成されたロイコトリエンA4 (LTA4 )は,ロイコトリエンC4 (LTC4 )に代謝され細胞外に放出された後,さらにロイコトリエンD4 (LTD4 ),ロイコトリエンE4 (LTE4 )へと変化する。ロイコトリエンの中で構造・作用が類似するLTC4 ,LTD4 ,LTE4 は,その分子内にシステイン残基を含むことからシステイニルロイコトリエン(cysteinyl leukotriene:CysLT)と呼ばれている。CysLTはオータコイド(局所ホルモンとも言われる)であり,主に産生・分泌された局所において作用する。
CysLTの受容体はCysLT1とCysLT2が知られており,ヒト鼻粘膜においては血管内皮細胞と浸潤細胞(主に好酸球や肥満細胞)にCysLT1 受容体が発現している(表1)3)。
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