特に既往歴・手術歴のない22歳の女性である。3日前から鼻水,咳が出現。いずれも軽度ながら,咽頭痛,頭痛,全身の関節痛,吐き気や1日3〜4回の軟便もみられるようになった。38℃前半の発熱とともに,徐々に全身倦怠感を感じるようになってきた。近くのクリニックに「歩くのも辛い」「早めにかぜを治したい」と思い,受診した。
内科一般を診る無床診療所でよく遭遇するかぜ症状にも,重篤な疾患が潜んでいることがある。病歴聴取・身体所見から診断を試みたい。「かぜ」=鼻水,咳を伴う全身症状として鑑別を考えてみた(表1)。
「かぜ」と表現しても,患者の考える「かぜ」は単に体調不良を示していることも多い。症状は,鼻汁,咳,咽頭痛,発熱,頭痛,関節痛,全身倦怠感,嘔吐・下痢など多様であるが,鼻汁を伴う全身症状があれば,ウイルス性上気道炎の可能性が高いと考える。
本例はウイルス感染症,特にウイルス性上気道炎の症状のオンパレードのように思えるが,落とし穴がないか経過をみていく。
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