83歳女性。高血圧・糖尿病・認知症で診療所の外来へ通院中。本日,通っているデイサービスで急に元気がなくなり,デイサービスの担当者から医療機関の受診を勧められ,家族と来院した。
「急に元気がなくなった高齢者」を診療する際は,「高齢者に急性経過で発症する頻度が多い病態」や,「高齢者に急性経過で発症し,生命・機能予後の観点から優先して確定・除外診断を行うべき病態」にわけて鑑別診断を考えるのが実際的である(表1)。
考えられる疾患として,①急性感染症,②脳血管障害,③脱水,熱中症,が挙げられる。
これには,肺炎・尿路感染症・胆道感染症(急性胆嚢炎)・皮膚感染症(蜂窩織炎など)と,これらに伴う敗血症が含まれる。いずれの病態においても,「軽い意識障害」「急性の食欲低下(経口摂取不良)」「平熱より上昇した状態」などを基盤に「急に元気がなくなった高齢者」として発症しうる。食欲低下の原因は多岐にわたるが,急性の経過では感染症が最も多いことや1),発熱に乏しい感染症,とりわけ敗血症や菌血症も念頭に置く。
特に脳梗塞では,「軽い意識障害」や嚥下障害により食事が摂れない状態である「急性の食欲低下(経口摂取不良)」が前景に立ち,「急に元気がなくなった高齢者」として受診する場合がある。
高齢者においては予備能の低いことがあり,何らかの原因で「急性の軽い意識障害」「急性の食欲低下(経口摂取不良)」「平熱より上昇した状態」が生じて脱水となったり,熱中症が原因で上記が生じて,「急に元気がなくなった高齢者」として受診することがある。
基礎疾患の増悪のほか,たとえば糖尿病治療中の患者における低血糖など,基礎疾患に関連した病態により「急に元気がなくなった高齢者」として来院している可能性を念頭に置くべきである。
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