問題サマリー
【主訴】呼吸苦
【現病歴】本年4~5月頃より,連日夜間に発作性呼吸苦および泡沫痰を認めた。臥床すると呼吸苦が出現するので自宅ではソファーに座って睡眠していた。仕事はいつも通りこなしていたが,入院数カ月前から比べて体重が増加した。8月10日取材中炎天下に長時間いたが水分は十分にとっていた。仕事中突然激しい動悸を覚えて,その直後に意識消失した。同僚の自家用車にて現場から5分程度離れた病院に搬送。心肺蘇生は施行されなかったが,30分ほどで意識回復し歩行も可能となった。ECGではSRで前壁のOMIを示唆しておりCK正常範囲,Troponin T陰性であり,翌日退院。8月12日午前0時頃,呼吸苦,泡沫痰が出現,救急要請し,CCU networkの要請にて当院来院,入院となる。
【既往歴】45歳 AMI,LADにPCI施行。胆石,胆嚢摘出術後。喫煙20本/日×27年
【内服薬】バイアスピリン100mg,レニベース5mg,アーチスト10mg,カデュエット配合錠2番,ダイアート30mg,ゼチーア10mg,タケプロン30mg
①まず原則
サマリーは専門外の医師にもわたることを考え,わかりやすく。ECG,SR,OMI,AMI,LAD,PCIなどの略語はできる限り使用しないこと。現病歴と既往歴をよく考えて。
②主訴は基本的に症状または症候を書く
たとえば,「冠動脈造影」は主訴でなく入院目的。上記の「呼吸苦」は医学用語とは言い難い。本文中も含め「呼吸困難」「息切れ」「起坐呼吸」などとする。
③現病歴は可能な限り過去にさかのぼる。また関連する疾患も同時に記載する
上記の場合,現病歴が唐突に始まっている。「本年」はわかりにくい。
また,既往歴にある45歳時の出来事は明らかに現病歴であり,内服薬を考えれば加療を受けていたとわかる。すべて,現病歴に記載すべきである。また,高血圧,脂質異常症の治療歴も冠危険因子として現病歴に含めるとよい。すなわち,「高血圧,脂質異常症を30歳くらいより指摘されていたが放置していた。45歳のとき急性前壁中隔心筋梗塞に罹患,左冠状動脈前下行枝に冠動脈形成術を施行。その後,虚血性心筋症の状態となり,交感神経遮断薬,レニンアルドステロン系の阻害薬などの投与を受け外来通院中であった」と始めるべきである。
④その他の注意点
冠危険因子の項を設けるとよい。仕事の内容も記載すべき。この患者さんは「作家」であった。「体重が増加した」とあるが具体的には「2kg増加」していた。これも記載すべきである。経過中のBNPの値や,心エコーの具体的計測数値などもわかれば記載するとさらによい。薬の名前はできる限り一般名がよいが,併記も可。
以上をふまえると上記のサマリーはこのようになる。
残り696文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する