腎硬化症は,わが国における透析導入の原疾患第3位である。その背景には高齢化があり,腎硬化症で透析導入された患者の約半数が75歳以上の高齢者である
高齢者における適切な透析導入時期については,明確なエビデンスがない。透析方法の選択肢についても,血液透析,腹膜透析のいずれにも長所・短所があり,医療者側は個々の症例を多角的に判断し,患者・家族と相談しながら選択すべきである
患者・家族の希望によっては,透析見合わせという選択肢もある
わが国において透析導入に至る末期腎不全の原疾患は,1998年にそれまで第1位であった慢性糸球体腎炎を抜いて糖尿病が第1位となり,その後,増加の一途にあったが,ここ数年はほぼ横ばいで推移している1)。慢性糸球体腎炎は減少傾向が続き,ここ10年で27.4%から16.9%に減少している。原疾患第3位である腎硬化症は,10年間で9.0%から14.2%へと増加傾向にある(図1)。
この背景には高齢化があり,透析導入患者の平均年齢を見ても,1980年代には50歳代であったものが,1994年には60歳を超えて,最近やや上昇が鈍化しているとはいえ,2015年末の時点で69.2歳となっている。性別で見ると,最も透析導入者の割合が高い年齢層は,男性は65~69歳,女性は80~84歳で,女性の高齢透析導入が目立つ。
わが国で腎硬化症により透析導入された患者のうち,55.8%が75歳以上の高齢者で,腎硬化症の平均透析導入年齢は2015年末において75.3歳である(図2)。また,75歳以上の高齢透析患者では,心筋梗塞,脳梗塞,大腿骨近位部骨折の既往を有する割合が高いことも報告されている(図3)。これらの結果から,腎硬化症による透析導入者は75歳以上の高齢者が多く,心血管疾患や骨関節疾患などの合併症を有することが特徴として挙げられる。
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