甲状腺癌の診断には超音波検査,穿刺吸引細胞診が必須の検査項目であり,甲状腺機能検査においては甲状腺刺激ホルモン(TSH),FT3,FT4,サイログロブリン(Tg)の4項目を行う
わが国の甲状腺癌の中で最も多くみられる乳頭癌は超音波検査などで95%以上の確定診断がつく。リンパ節転移をきたしやすく,術式は患側甲状腺半切とリンパ節郭清である
根治手術が施行された甲状腺癌は予後が良好で,補助化学療法などは不要であるが,進行癌や未分化癌は,今後分子標的薬などの使用を含めた研究が望まれる
甲状腺癌の発生頻度は,健康診断や集団検診など, 病院での初診や手術例,剖検例でばらつきがある1) が,超音波検査を用いた検診での頻度は,武部ら2) が10mm以上の乳頭癌が受検者の0.88%にみられたと報告している。一般外来における甲状腺癌の頻度は6/1489(0.4%)との報告がある3)。甲状腺癌の頻度はわが国の被爆地以外の剖検例(ラテント癌)で3.69~13.8%と報告されている4)。頸動脈エコーでincidentaloma(偶発腫瘍)が発見されるのは13%5)であり,頸部エコーの発見率より低いのは深部用プローブを使用しているためと思われる。那須ら6)は,人間ドックにおける超音波検査で0.29%に癌を発見し,そのうちの28.9%は微小癌であったとしている。オカルト癌はこれよりも多く,ラテント癌より少ないものと推察される。
診断方法は表1に示す通り, 組織型により異なるので,臨床症状で疑うべき組織型を念頭に置き,検査を進める。まず,超音波検査,穿刺吸引細胞診は必須の検査項目で,疑診も含めれば,濾胞癌以外のすべての悪性腫瘍が診断可能である。特に乳頭癌は診断率が高い。甲状腺機能検査は甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone:TSH),FT3,FT4,サイログロブリン(Tg)の4項目を行う。髄様癌の診断には腫瘍マーカーのCEA,カルシトニンが必要である。未分化癌,悪性リンパ腫の確定診断には穿刺吸引細胞診での鑑別は困難で生検が必要となる。腫瘍が大きければ直視下のneedle biopsy(針生検)で確実に組織診断が可能である。予後が悪いので,早急に診断し治療する必要がある。
超音波下穿刺吸引細胞診は微小癌の確定診断に有用であるが,slow growingな甲状腺癌においては,予後を左右する因子である組織型,周囲への浸潤の有無,遠隔転移の有無を判別する検査のほうが重要である7)。ヨードシンチグラフィーは甲状腺腫瘍の質的診断には有用ではないが,機能性結節の部位診断には必要な検査である。特に甲状腺全摘後の全身ヨードシンチグラフィーは再発や遠隔転移の有無が明らかになり有用である。2009年1月にタイロゲン1397904493(rhTSH)が発売されたが,高価であることから,使用は131I内用療法の適応患者に限定される。PET検査でも甲状腺癌が発見されるが,false positive(偽陽性)が多く,特異度は低い。
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