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極低出生体重児の低サイロキシン血症に対する対応【甲状腺機能を慎重に観察し,L-T4を一律に投与することは避ける】

No.4857 (2017年05月27日発行) P.54

内山 温 (東京女子医科大学母子総合医療センター 新生児医学科准教授)

登録日: 2017-05-24

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サイロキシンは,胎生期から出生後の乳幼児期に至るまでの神経細胞の遊走と分化,髄鞘化,シナプス形成などに不可欠なホルモンである1)。したがって,低サイロキシン血症を放置すると,神経発達予後に影響を及ぼす可能性がある。

早産児,特に極低出生体重児では,生後1~2週頃に甲状腺刺激ホルモンの上昇を認めない低サイロキシン血症を認めることがある。その多くが一過性であるため,transient hypothyroxinemia of prematurity(THOP)と呼ばれている。この病態を呈する症例に対してレボチロキシンナトリウム(L-T4)を投与した多施設共同比較試験では,修正18カ月,3歳での身長・体重・頭囲および発達指数や脳性麻痺などの神経発達予後に対する効果は認められなかった2)3)

THOPは異化を抑えるための生理的な反応であるという考え方がある。生理的に異化を抑えているところにL-T4を投与すると,異化が亢進して恒常性を乱す危険性がある。以上の理由から,THOPを示す早産児に対して一律にL-T4を投与すべきではない。経過観察中に甲状腺機能低下を疑う臨床所見が認められた場合には,L-T4投与を開始して,その後の甲状腺機能と臨床所見の改善の有無を注意して評価していくのがよい。

【文献】

1) Horn S, et al:Mol Cell Endocrinol. 2010;315(1-2):19-26.

2) Uchiyama A, et al:J Pediatr Endocrinol Metab. 2015;28(1-2):177-82.

3) Uchiyama A, et al:J Perinatol. 2017;37(5):602-5.

【解説】

内山 温 東京女子医科大学母子総合医療センター 新生児医学科准教授

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