骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折に伴う遅発性神経麻痺に対し,後方からHAスペーサを挿入して圧潰した椎体を再建する方法を工夫した
全例で神経麻痺は改善し,矯正損失も6度以内で維持されていた
損傷されていない椎間板を利用して,できるだけ小範囲で椎体を再建する方法である
今後,長期に経過観察をする必要があるが,HAスペーサの後方進入椎体内挿入術は,骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折に対する手術方法の選択肢の1つになりうると考えられる
骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折(osteoporotic vertebral compression fractures:OVCFs)による遅発性神経麻痺の病態は,椎体圧迫骨折後にischemic bone necrosisが生じ,偽関節になり,陥入骨片が脊髄を圧迫し,椎体不安定性が生じるためであると言われている。進行性であるため,保存的治療は困難であると報告されている1)。
当院では,手術例に対しては人工骨を使用して前方除圧固定術を行ってきた。図1は,2000年にKaneda device2)を使用して前方除圧固定術を実施した症例である。術後13年の86歳でも杖歩行が可能で,経過は順調である(図1a・b)。このように前方除圧固定術の成績は良いが3),時に呼吸器系の合併症を生じ,周術期の管理に手間を要するという問題点がある。
今回,後方からの方法で前方除圧固定術と同程度の椎体再建方法を模索し,HA(hydroxyapatite)スペーサを後方から挿入して圧潰した椎体を再建する方法を工夫した。
対象は,2013年6月以後,OVCFsによる遅発性神経麻痺と診断された5例である。性別は男性1例,女性4例で,手術時年齢は62~82歳(平均71.2歳)であった。損傷椎体は第12胸椎(T12)が4例,第1腰椎(L1)が1例であった。手術方法としては,椎体を完全に摘出する方法から徐々に椎間板を温存して椎体内にHAスペーサを挿入する方法を用いた。以下に手術方法を示す。
①椎体を完全に摘出してHAスペーサを挿入
②椎体の頭側の終板,椎間板のみを摘出して隣接椎体と固定
③椎体の頭尾側の終板を温存し,椎体内にHAスペーサを挿入して椎体を再建(後方進入椎体内挿入術)
①は通常実施されている後方進入椎体切除術(posterior vertebral column resection:PVCR)であり,②は尾側の正常部分と頭側の椎体固定術である。ここでは,③の手術方法について具体的に記載する。
本法では罹患高位とその頭側の椎弓切除術を実施し,pedicle screw(PS)を挿入して反対側を仮固定する。椎弓根を同定し,その髄腔を頭尾側内外側に拡大する。挿入側の椎弓根の内側縁と上縁を切除する。下壁はできる限り温存する。同レベルの神経根を確認し,椎弓根の内上壁を切除後に頭尾側の終板を確認する。終板間に2×7mmのスプレッダーを挿入し,徐々に終板間を8×10mmまで拡大する。その後,終板間に8×10mmのtrialを挿入し,次に10×10mmまで拡大する。この拡大には椎体後壁の切除が3~5mmくらい必要であるが,HAスペーサのback out予防のため後壁は残す。trialで確認後にHAスペーサの挿入を実施する(図2a~c)。検討項目としては,歩行能力改善度,最終調査時の矯正損失の角度がある。
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