形成外科手術の中でも母斑や血管病変といった整容的な結果を求められる疾患においては,術後の瘢痕が問題であった。1963年にGoldmanが色素病変に対して初めてレーザー治療を行って以降,レーザー治療は飛躍的に進歩した。しかし,四半世紀前までは,疾患ごとの選択的な治療というよりは,瘢痕をぼかす治療が主であった。
83年にAndersonとParrishが,①波長,②照射時間,③エネルギー,の3条件を満たすレーザーを照射することで,色素病変を瘢痕なく選択的に破壊することができるという選択的光熱分解理論を提唱した。以後,レーザー治療によって毛細血管奇形(単純性血管腫)や太田母斑などを瘢痕なく治療することが可能となった。わが国でも血管病変に対しては色素レーザーが,メラニン病変に対してはQスイッチルビーレーザーとQスイッチアレキサンドライトレーザーが既に保険適用となっている(一部疾患を除く)。2004年には,Mansteinらが面状ではなく点状に微細なレーザーを照射し熱損傷を軽減させるfractional photothermolysis理論を発表し,しわやたるみなどに対する美容レーザー医療における瘢痕や色素沈着のリスクを大幅に低下させた。さらに近年では,照射時間がピコ秒のレーザーが開発され,刺青を中心とした治療に応用されている。
現在では,レーザー治療は形成外科領域に欠かせない治療法となっている。今後は,レーザー機器の開発だけでなく,複数のレーザーを組み合わせた治療や,レーザー治療と既存の治療を組み合わせた複合的治療法の開発が大いに期待される。
【解説】
王丸陽光*1,3,清川兼輔*2 *1久留米大学形成外科・顎顔面外科講師 *2同主任教授 *3王丸クリニック