株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

神経系の外科的治療と再生の現在と未来【末梢側軸索を中枢側軸索等と再接合,再疎通させることによる即時神経機能再生に期待】

No.4861 (2017年06月24日発行) P.58

小川 令 (日本医科大学形成外科学教室主任教授)

成島三長 (三重大学医学部形成外科学教室教授)

登録日: 2017-06-22

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 形成外科では顔面神経や指神経の麻痺を治療するなど,末梢神経を扱うことが多くあります。しかし,血管のように別の部位から移植すればリモデリングが生じて元通り,あるいは切断されたら吻合して元通り,というわけにはいかないようです。
    そこで,最新の研究をふまえた上で,神経系の再生や外科的治療の現状と未来について,この分野のエキスパートである三重大学・成島三長先生のご教示をお願いします。

    【質問者】

    小川 令 日本医科大学形成外科学教室主任教授


    【回答】

    形成外科分野で扱うがんなどの腫瘍切除後の末梢神経の再建は,主にマイクロサージェリー技術を用いて神経吻合・神経移植・神経筋移植などを行っています。これは,正確には神経軸索が数千本入った直径数mmの神経上膜と呼ばれる最外側の膜を,9-0といったナイロン糸を用いて縫合しているにすぎません。

    実際には神経軸索を縫合しているわけではなく,神経を包んでいる膜周囲を縫合することにより,内部に存在する神経の再生軸索が伸長する通り道を作成し,神経の再生を誘導しています。つまり,神経は損傷された部位から人間本来の回復能力に依存して再生するのを待っている状態です。このため,①神経再生までの数カ月間に,筋が萎縮し本来の機能回復を得られない,②神経軸索再生時に神経瘢痕が生じ再生軸索数が制限される,③再生神経軸索が元の支配部位ではない別の部位に再生してしまう,等の問題があります。

    残り679文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top