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(2)抗微生物薬を中心とした治療の工夫(減量できない薬剤)[特集:高齢者の薬物治療における効果と有害事象]

No.4864 (2017年07月15日発行) P.34

木村匡男 (鈴鹿回生病院薬剤管理課課長)

登録日: 2017-07-14

最終更新日: 2017-07-12

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  • 高齢者は,加齢に伴い腎臓・肝臓・心臓・肺の機能など様々な生理機能が低下するとともに,体の成分組成の変化により薬物体内動態が変化する

    抗微生物薬は腎排泄型薬剤が多いため,高齢者などの腎機能低下患者に使用する場合は,減量あるいは投与間隔の延長を行うか,肝・胆道系排泄型薬剤に変更する必要がある

    アミノグリコシド(AGs)系抗菌薬やアムホテリシンB(AMPH-B)などは,薬物動態-薬力学(PK-PD)パラメータがpeak濃度(Cpeak)や最高血中濃度(Cmax)に依存するため,1回量を減量せずに投与間隔の延長を行うことで,高齢者に対しても安全に使用することが可能である

    内服抗微生物薬を選択するにあたり重要な点は,生物学的利用能(BA)の高さ,投与回数,他の薬剤との相互作用,服薬アドヒアランスである

    1. 高齢者における感染症と抗微生物薬

    近年,医療の進歩により高齢者人口は増加しており,その多くが脳血管疾患や心疾患などの基礎疾患を有している。また,加齢に伴い腎臓や肝臓などの臓器機能や免疫能などが低下し,感染症にも罹患しやすい。その中でも肺炎は,死亡率で脳血管疾患を抜いて第3位となっている。感染症に使用できる抗微生物薬に関しては,新規薬剤の開発が停滞していたり,多剤耐性菌の増加により治療に難渋するケースが散見される。

    高齢者に対する抗微生物薬投与の有効性や安全性に関するエビデンスは少ない傾向にある。日本老年医学会から「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」1)が発刊され,その中では「特に慎重な投与を要する薬物」や「開始を考慮するべき薬物」が記載されているが,抗微生物薬に関する記載はない。抗微生物薬は,降圧薬や糖尿病薬,H2受容体拮抗薬,非ステロイド性抗炎症薬などのように長期投与することは少ないが,腎臓から排泄される薬剤が多く,投与方法を考慮しなければならない。また,糖尿病の治療のためにスルホニルウレア薬を服用している高齢者に対して,クラリスロマイシンやレボフロキサシン(LVFX),スルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST)などの抗微生物薬を併用すると,低血糖のリスクになることが報告されているように2),抗微生物薬と併用する薬剤においても注意が必要となる。

    高齢者の感染症治療においては宿主因子も重要であるため,各臓器に負担とならないような投与設計を心がけなければならない。

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