(福岡県 T)
インフルエンザウイルスの分離増殖培養には鶏卵が用いられてきた歴史的な背景から,現行のインフルエンザワクチンも,臨床検体から鶏卵で分離されたウイルス株を用いて生産されます。
ウイルス表面にあるヘマグルチニン(hemagglutinin:HA)と細胞表面に存在するレセプターとが結合することでウイルス感染が始まりますが,鶏卵細胞とヒトの呼吸器上皮細胞では,そのレセプターの構造が微妙に違うため,ヒトで流行している季節性インフルエンザウイルスが鶏卵細胞で効率よく増殖するためには,HAの構造を変化させる必要があります。すなわち遺伝子変異によりアミノ酸変異を起こす必要があります。この変化の結果,鶏卵で増殖させたウイルスと実際にヒトの間で流行しているウイルス(流行株)では,その抗原性が変わってしまうことがあります。
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