てんかんは有病率0.5~1%の「よくある病気」(common disease)である
てんかんは発作症状,背景疾患などが多様で,痙攣のないてんかん発作も多い
診断には脳波や神経画像などが有用であるが,詳細な病歴が最も重要である
近年,自己免疫,代謝異常,遺伝子異常などに伴うてんかんの病態が解明されつつある
従来,てんかんとは「種々の成因によってもたらされる慢性の脳疾患であって,大脳ニューロンの過剰な発射に由来する反復性の発作(てんかん発作)を特徴とし,それに様々な臨床症状および検査所見が伴う」というWHOの定義が用いられ,てんかんと診断するためには,少なくとも2回のてんかん発作が存在する必要があった。しかし,2014年,国際抗てんかん連盟(International League Against Epilepsy:ILAE)により,新しい定義が提唱され1)(表1),発作が1回しか生じていない場合でも,再発のリスクが十分に高い,もしくは“てんかん症候群”の診断がなされれば,てんかんと診断されることになった。なお,てんかん症候群には表2に記したものが含まれている2)。
また,てんかん発作とは,「脳の異常に過度なあるいは同期性のニューロン活動に起因する一過性の徴候・症状の発現」と定義されている3)。
てんかんの有病率は0.5~1%とされており,わが国にはおよそ100万人のてんかん患者がいるものと推定されている。また,わが国は超高齢社会となってきているが,高齢者ではてんかんの有病率が約1.2~1.5%に増加することが示されており,今後,特に高齢者のてんかん患者が増加するものと考えられる。
前述の通り,てんかん発作を生じうる状態がすべててんかんであり,その背景には非常に多様な疾患が存在する。この背景疾患はてんかんの発症年齢により異なる傾向を示すが,新生児・乳児期では脳形成異常,代謝障害,特発性,周産期障害,染色体・遺伝子異常などが多く,その後,加齢とともに感染症,外傷などが増加し,さらに高齢になると変性疾患,脳腫瘍,脳血管障害などが増加する。
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