▶外来診療を行う医師を対象とした『抗微生物薬適正使用の手引き第一版』を厚生労働省が6月に公表した。「急性気道感染症」と「急性下痢症」に焦点を当て、抗菌薬の使用・不使用の考え方について最新のエビデンスに基づいて整理している。
▶手引きが作成されたのは、政府が昨年4月に策定した「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」において、抗微生物薬の適正使用を目標に掲げたためだ。日本のアクションプランは、世界保健機関(WHO)が加盟各国に対しAMRに関する行動計画を策定するよう要請したことを受けて進められている。AMRはG7サミットや国連総会の議題となるなど今や国際的な課題となっている。
▶米国では、処方された抗微生物薬の30%程度は不適正使用であることが研究で示されており(Fleming-Dutra KE, et al:JAMA. 2016;315 (17):1864-73.)、日本でも適正使用を進めることで、抗菌薬の使用量が減少すると見られている。
▶AMRの問題の1つとして、日本ではこれまで医学部で感染症の教育が不足していたことが指摘されているが、今年3月に6年ぶりに改訂された医学教育の指針「モデル・コア・カリキュラム」では、感染症に関する項目が充実し、AMRを理解することも学修目標に盛り込まれた。現在、臨床現場を担う医師たちにとっても、『抗微生物薬適正使用の手引き』は最新の感染症診療を学ぶ良いテキストになるだろう。
▶本誌も8月26日号でAMR対策に関する特集を企画している。この中で感染症診療の最前線で活躍する医師にご登場いただく予定だ。読者の今後の感染症診療やAMR対策に生かしてもらえるよう、鋭意取材を進めたい。