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(2)全身性炎症性疾患としての乾癬─その併存症と評価の仕方 [特集:変化しつつある乾癬治療の今]

No.4761 (2015年07月25日発行) P.23

奥山隆平 (信州大学医学部皮膚科学教室教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-15

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  • 乾癬患者では,メタボリック症候群を併存する危険性が2倍程度高い

    虚血性疾患など併存する疾患によって,生命が危機に瀕する可能性がある

    皮膚炎によって産生される炎症性サイトカインが動脈硬化を促進し,虚血性疾患などの危険性を高める

    乾癬の皮膚症状を治療して軽減すると,メタボリック症候群や虚血性疾患など併存する疾患の悪化を軽減できる可能性もある

    肥満を軽減すると,動脈硬化やメタボリック症候群だけでなく,乾癬の皮膚炎の軽快にもつながることが少なくない

    1. 乾癬では動脈硬化が進行しやすい

    乾癬は,厚い鱗屑を伴う紅斑が全身に散在し(図1),皮膚炎が慢性的に長期間継続することで,目を引く皮疹は患者本人にとって大変なストレスとなっている。当然のことながら,皮膚炎を抑え,いかに外見的な面を改善するかという点に焦点を当てて医師も患者も治療を進めてきた。一方,皮膚に限定した疾患ととらえると,内臓などの見えない部分に対しての注意は怠りがちであった。これまで,乾癬とともに虚血性疾患やメタボリック症候群が併存していても,偶然ととらえられてきたのである。しかし,乾癬を持っていると高血圧,脂質異常症,糖尿病などのメタボリック症候群が併存しやすいことは,複数の疫学調査で明らかにされ,偶然の一致ではないことが広く認められるようになっている(図2)1)。乾癬患者では,乾癬を持たない集団と比較してメタボリック症候群が併存する危険性が2倍程度高まるようである。インスリン感受性の低下,脂質代謝異常などといったメタボリック症候群の病態は動脈硬化の進行を促す。乾癬は,動脈硬化の危険因子という性格を有するわけである。
    特に,皮膚炎が軽症の場合はまだしも,中等症や重症の場合,虚血性疾患やメタボリック症候群といった併存症に注意を払う必要がある。併存症によって寿命が短縮する傾向がみられるからである。英国での疫学調査では,乾癬を持たない集団と比較して,重症の乾癬患者では寿命が6年短縮すると報告されている2)。寿命を短縮させる最大の要因は虚血性心疾患であり,1年間に1000人当たり61.9人が虚血性心疾患によって死亡すると報告されている。
    また,乾癬と関連して虚血性心疾患が生じる危険性は,老年層より若年層において高まる傾向がある3)。中等症や重症の乾癬がある場合,若年者であっても虚血性心疾患などの発症に注意する必要がある。乾癬治療では目に見える皮膚炎を改善させることは言うまでもないが,動脈硬化を背景とする目に見えない併存症にも十分な注意を払うことが大切である。


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