「市立大学として中小企業の多い大阪市の産業を活性化し、なにわの街を元気にしたい」
種子島から人工衛星「まいど1号」を打ち上げたことで知られる航空機部品メーカー・アオキの青木豊彦社長らと共に、昨年9月、「ものづくり医療コンソーシアム」を立ち上げた。医療者側のニーズと大阪の中小企業の技術をマッチングし、車椅子に固定する点滴台、血管内治療に使うステントなど“メイドイン大阪”の医療機器開発を目指す。「大きな夢は大阪で開発した医療機器をまずはアジア、そして世界へ広めることです。留学生用寄宿舎を作ったり、アジアの大学11校と提携したり、医学部長として留学生の受け入れやグローバル教育を推進してきました。母国に帰った留学生などを通じて医療技術とものづくりで協力関係を築いていければ、日本にもアジア諸国にもメリットは大きいはずです」
胃粘膜防御機構の解明に貢献し、海外にも研究仲間が多い荒川さん。現在も香港中文大医学部長のフランシス・チャン教授と共同で、小腸の炎症や出血を止める治療薬の国際臨床試験を進行中だ。
□
院内での人望も厚い荒川さんは、東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県大槌町への支援を続ける大阪市大医学部教職員・学生ボランティアチーム「なにわすまいるず」の代表も務める。震災発生直後に医師を派遣した大槌町へ息の長い支援を続けるために、患者・家族や職員が利用する附属病院内のレストランで1食200円分を義捐金にあてる震災復興支援メニューを販売し、毎年、大槌町の中高生に学費補助金として贈呈する仕組みを作った。「一大学病院ができることは限られていますが、ほかの病院が別の町へピンポイントで義捐金を送るなど、支援の輪が広がってほしい」と話す。
趣味は料理。大量のビーフシチューを煮込み、3人の子どもとその配偶者、9人の孫に振る舞うことも。消化器内科の専門家、大阪のリーダーとして、医療を通じ大阪とアジアへ元気のスパイスをまくべく腕を振るう。