糖尿病患者数が世界一多い中国で、日本式糖尿病医療の導入が進みつつある。2011年から中国で日本式糖尿病チーム医療を行うプロジェクトを推進する、東京大学糖尿病・代謝内科特任講師の飯塚陽子氏に、その効果と今後の展望を聞いた。
きっかけは、2010年4月に中国で、門脇孝教授の代理で日本の糖尿病医療について講演し、同国の臨床現場を見学したことでした。
私が見学したのは中国トップレベルの病院だったのですが、糖尿病治療は医師のトップダウンで薬物療法が中心でした。
最初に食事療法と運動療法、生活習慣の改善を行い、医師、看護師、栄養士、薬剤師などが専門性を生かして患者のモチベーションを引き出す「チーム医療」が基本の日本とは違いが大き過ぎてショックでした。
帰国後、経産省が医療サービス国際化推進事業を公募していることを知り、「日本式糖尿病診療サービスの中国展開に関する調査」を始めることになったのです。
2011年度に上海の大学病院で5回、計9日間、「日本式糖尿病クリニック」を開設しました。中国人の糖尿病患者に対して、医師の診療、看護師による糖尿病教育とフットケア指導、栄養士による栄養指導、自己血糖測定の指導などを無償で行いました。
日本式糖尿病サービスは非常に好評で、回数を重ねるごとに口コミで患者さんが増えました。上海の病院で260人の中国人患者を対象に実施したアンケートでは、8割以上の人が「糖尿病への知識・理解が深まった」「有酸素運動が増加」と回答し、有償でもサービスを受けたいと答えてくれました。
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