攻めのリハビリは脳卒中治療,全身管理,リハビリ治療を同時並行で進める
発症後2日以内に開始した端坐位訓練は廃用症候群を予防する
中等症以上の片麻痺の歩行獲得には早期長下肢装具歩行戦略が必須である
在宅継続には,社会参加・貢献できる社会環境整備が必要である
脳卒中急性期治療という名前の盲目的安静臥床は,廃用症候群を頻発させ,寝たきりによる褥瘡,拘縮,深部静脈血栓症,遷延性意識障害が当たり前の暗黒の時代が長く続い た1)2)。この暗黒の時代の終焉は,2000年,回復期リハビリテーション(以下,リハビリ)医療制度の発足により,急性期・回復期・慢性期連携による医療分業が明確化したことに始まる1)~4)。
脳卒中発症後3カ月の後遺症は,その大部分が一生涯残存しうる1)。このため後遺症治療の遅れは,機能回復の遅延や社会復帰の困難に直結する。しかし,急性期医療の現場には,後遺症治療におけるtherapeutic time windowの意識が乏しい5)。この結果,軽微な後遺障害患者は社会復帰や復職が可能となるが,中等症以上の後遺障害をきたすと社会復帰や復職は容易でない1)4)。
一方,脳卒中発症後1カ月以内に開始された集中リハビリ・プログラムは脳の可塑性により神経機能を回復させることが明らかとなり6) ,脳卒中後遺症に対する治療は,従来の代償動作の獲得から機能障害自体の回復をめざすアプローチへと変化してきた1)~4)。脳卒中後遺症の回復予測は,脳損傷の程度(残存健常脳組織の画像診断),年齢,病前の日常生活動作(ADL)と認知状態,発症後の麻痺や廃用症候群の程度の評価で可能となる1)。
脳卒中後の攻めのリハビリは,脳卒中治療,全身管理,リハビリ治療を同時並行で進め,神経機能回復,廃用症候群予防,ADL能力向上により,社会復帰や社会貢献を実現できる人間力を回復(人間回復)させる1)~4)。脳卒中医療は脳卒中地域連携パス(図1)で示されるように,各時期に脳卒中治療・全身管理・リハビリを同時並行する医療とされるが,一人で管理できるリハビリ医や脳卒中医はいまだ少なく,その養成が喫緊の課題である。一方,医師には看護師や療法士などの全スタッフをまとめるチーム医療のリーダー業務があり,オーケストラの指揮者的に逆ピラミッド型の裾野で治療管理する力が必須である。
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