手引きを作成した厚生労働省「抗微生物薬適正使用(AMS)等に関する作業部会」座長の大曲貴夫氏に狙いを聞いた。
手引きで強調したことは、“抗菌薬を処方しなくてもよい症例を見分ける”ということです。「抗菌薬を飲んでも悪いことはない」と言う方もいますが、不要な患者さんに処方した結果、副作用が生じる可能性もあります。
もう1つ強調したのは、“外来で出会う症例の中には抗菌薬が必要な重大な感染症の患者さんもいる”ということです。そういう方を選び出し、適切な治療につなげてもらうことが大事。なぜこんなことを言うかというと、診断がつかなくても抗菌薬を投与しさえすれば大きな問題にはならないと思っている方もいるからです。
大きな病院には、地域の医療機関で抗菌薬を処方されたけれど症状が重症化し、診断もついていない患者さんが紹介されてくることがあります。その場合、検査する前に抗菌薬が投与されているので原因微生物が分からないことがある。そうなると適切な治療ができなくなってしまいます。そんな事態にならないよう、手引きには、重大な症例に気付くためのヒントを示しました。
手引きでは、患者さんへの説明例も具体的に示しています。開業医の先生の中には「抗菌薬を処方しなくなったら患者が来なくなるかもしれない」と不安を口にする方もいます。その気持ちはよく分かります。一方で、安易な抗菌薬投与によって患者さんに不利益がもたらされることもあります。ですから、抗菌薬が必要ない理由や、経過が思わしくない場合には抗菌薬が必要になることなど、診療計画を患者さんに説明する際の参考になればと思っています。
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