深刻化する薬剤耐性感染症(ARI)の対策には、新規抗菌薬の開発が不可欠だ。しかし、治療薬やワクチン、診断薬などの研究開発・事業化は、製薬会社にとって市場性や予見性が低く、開発の優先順位を上げにくいという課題がある。
これを受け「アクションプラン」には、ARIに対する新規抗菌薬開発に向けた施策として、「国際共通臨床評価ガイドライン(GL)の策定」「優先審査制度の創設」などが盛り込まれた。創薬促進に向けた産官学の動きは既に始まっている。日本化学療法学会など感染症関連7学会は、8月3日に合同の「感染症治療・創薬促進検討委員会」を開催。創薬促進に向けた取り組みが報告された。
厚生労働省はARI治療薬・診断薬を対象にした優先審査制度の創設を明言し、検討を開始している。国際共通臨床評価GLについても、医薬品医療機器総合機構(PMDA)、欧州医薬品庁(EMA)、米国食品医薬品局(FDA)の三者が協議の場を持ち、抗菌薬の承認審査に関する共通プロトコルの策定に向けて議論している。4月の会合では、臨床試験の推奨事項が議論され、尿路感染症と腹腔内感染症については、患者選択基準や有効性評価の部分で合意に至った。
PMDAの佐藤淳子氏は「まず取り組むべきは、1つのプロトコルで、日米欧のみならずアジアでも抗菌薬開発が進むようにすること」と述べ、AMR対策に一層力を注ぐ考えを強調した。
日本製薬工業協会は今年4月、厚労省に「提言」を提出している。その中では、①国による新規ARI治療薬の備蓄・買い取り制度、②AMRに特化した官民連携の基金および研究開発機構(コンソーシアム)の設立、③製造販売承認取得報奨制度―の創設が提案されている。山口栄一氏(塩野義製薬)は「かつての感染症研究者が別領域に異動し、抗菌薬の化合物が生かされていない」との実態を指摘。日米欧のコンソーシアムが融合し、ARIの国際的な研究開発を推進すべきと訴えた。
国内のARI研究開発への支援の手も伸びつつある。日本医療研究開発機構(AMED)の担当者によると、昨年のAMR関係の研究支援テーマ数は7個にとどまったが、今年は7月時点で29個に上っているという。研究開発推進を謳ったアクションプランの効果が少しずつ表れているようだ。