医療分野へのICT(information and communication technology)の活用およびビッグデータ解析の基盤構築が進んでいる。電子カルテを介して膨大な医療情報(electronic health record:EHR)が日々蓄積されている。この情報の“宝庫”を研究に活用するためには,情報の交換を可能とするインフラが必要となる。厚生労働省は“標準化ストレージ”SS-MIX2を開発している。基本情報,処方・検査データなどに標準化マスタが用意されており,準拠することで,施設ごとのローカルマスタを“標準化”することが可能となる。
日本腎臓学会と日本医療情報学会は,厚生労働省研究事業として包括的慢性腎臓病(CKD)データベース(J-CKD-DB)1)の構築に着手している。全国20数大学の参画を得て,尿蛋白1+以上,かつ/または,eGFR 60mL/分/1.73m2未満をCKDと自動判定し,CKD該当例の医療情報を一挙にデータセンターに収集するものである。登録にはMCDRS(東京大学)を活用している。従来のデータベース(DB)は手入力に依存する部分が多く,負荷が大きく,また入力エラーも不可避であった。
2019年6月時点で,7万件を超えるCKD例が収集され,最終的には数十万件規模のDB構築をめざしている。このビッグデータを解析することで,まったく新規の知見獲得が期待される。その成果を医療現場に還元していきたいと願っている。
【文献】
1) J-CKD-Database. [http://j-ckd-db.sakura.ne. jp/researcher/about.html]
【解説】
柏原直樹 川崎医科大学腎臓・高血圧内科主任教授