高齢者の多剤投与(ポリファーマシー)対策のため、厚生労働省がガイドライン(GL)を作成することになった。厚生労働省の「高齢者医薬品適正使用検討会」が8月に取りまとめた中間報告書の中で、高齢者の薬物動態等を踏まえた投与量の調整(止めどき、減らしどき)や薬物相互作用による副作用の発生を防止するため、GLを作成する必要性を指摘。これを受けて厚労省はワーキンググループを設置し、1日の初会合では、2段階でGLを作成するスケジュールを示した。
第1弾として作成されるのが、関連学会のGL等で得られた一定のコンセンサスを包含した「包括的GL」。今年度末の完成を目指す。
第2弾は、新たな調査・分析を実施した上で作成する「専門領域別もしくは領域横断的な病院機能別のGL」。18年度末をメドとしている。現状、GLの基礎なるエビデンスが十分ではないため、厚労省は、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を利用するなどして、多剤服用の実態や副作用に関する分析・評価を行う。
高齢者は腎・肝機能が低下するなどして薬物動態が変化する一方、合併症により多剤投与が増加し、それによる副作用の増強、薬物相互作用の発現が指摘されている。欧米の報告では、高齢者の入院症例の6〜15%に医薬品関連の有害作用を認めており、60歳未満に比べて70歳以上では1.5〜2倍の出現率だった(Rothschild JM, et al: Arch Intern Med 2000. 160: 2717-28)。
厚労省の調査では、複数の医療機関から合計10種類以上を投薬されている患者が一定割合存在していることが分かっている(図1)。また、東大の調査によれば、6種類以上で薬物有害事象のリスクが特に増加。診療所通院患者を対象にした調査では、5種類以上で転倒の発生率が高かった(図2)。
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