厚労省は現在、「地域包括ケアシステム」と銘打ち、在宅医療・介護施策を進めている。それにはマンパワーの養成が不可欠で、2025年あたりまでに介護士を現行よりも100万人増やしていかなければならない。当然、看護師養成も急務ではあるが、とりわけ介護士の人材不足は深刻だ。その要因は主に「賃金水準」「やりがい」「業務負担」などとする分析結果が多くの研究機関から公表されているものの、未だ抜本的な解決策は具現化されていない。
このような要因を是正していくには、再度「介護」と「看護」の資格概念から考え直す必要があろう。端的に言えば、「看護」は医療行為を伴う部分が含まれることから、大きく「介護」とは違った要素があろう。そのため、看護師は3年以上養成校で勉強し国家試験に合格しなければならない。しかも、これは業務独占であり、有資格者でなければ看護業務を行うことはできない。一方、介護士では、上級資格である介護福祉士は2年以上養成校で勉強し国家試験に合格すれば資格取得できるが、国家資格でありながら名称独占資格にすぎない。
また、准看護師という資格も存在する。国家資格ではないものの、2年間の養成校での勉強を経て試験に合格し、都道府県知事免許を得れば資格取得でき、業務独占資格となっている。准看護師は、医師・歯科医師および看護師の指示の下での医療行為が認められ、実際、看護師不足の介護現場では医療的側面において重要な役割を果たしており、介護士よりもはるかに賃金水準も高い。
そもそも、医療技術の進展によって、一部の医療行為は家族などの介護者にまで拡充されている。経管栄養、痰の吸引、インスリン注射、導尿、褥瘡対応、在宅酸素療法などが、医療スタッフによる短時間の指導の下に行われている。
昨今、准看護師制度の廃止が議論されている。廃止されるのであれば、介護福祉士のカリキュラムを3年以上に延ばして「療養介護福祉士」(仮称)といった資格に変更し、現行の介護福祉士と准看護師の要素を組み合わせた介護士資格にドラスティックに改革してはどうであろうか。そうなれば介護士資格が業務独占となり、賃金水準も向上し介護士不足のカンフル剤となろう。しかも、介護現場を中心とした看護師不足の解消にもつながる。
非現実的な提案と考える人も多いかもしれないが、かなり大胆な施策を打ち出さない限り、慢性的な介護士不足の問題は解決されないと考える。