基礎疾患を有する者は感染症の罹患リスクが高いため,適切な時期に推奨されるワクチンを接種することが重要である
免疫不全者に対する生ワクチンの接種は,ワクチン株由来の感染症を発症する可能性があるため,慎重に検討すべきである
基礎疾患を有する者は,健常人と比較して感染症に罹患するリスクが高い。そのリスクを最小限にするためにも,適切なワクチン接種で発症予防に努めることが重要である。
米国では毎年,基礎疾患を持つ成人に対して,推奨されるワクチンおよびその接種スケジュールを発表している(図1)1)。国内未承認のワクチンの使用や,使用方法が異なるものもあるため,米国の推奨をそのまま適用することはできないが,基礎疾患を有する者へのワクチン接種を考える上で参考になる。
COPD患者が呼吸器感染症を発症すると重症化しやすく,かつ,COPDの増悪原因となる。このため,インフルエンザワクチンおよび肺炎球菌ワクチンの接種が推奨される1)2)。
インフルエンザワクチンの効果に関しては,COPDの急性増悪の頻度を有意に減少させることが示されている3)。また,インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチン併用接種群と,インフルエンザワクチン単独接種群を比較した研究では,前者が有意にCOPDの急性増悪を減少させた報告がある4)。
肺炎球菌ワクチンでは23価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン(PPSV23)と13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)が主に使用される。肺炎球菌ワクチンの接種方法は,わが国と米国では考え方が異なるので注意が必要である。米国ではこれまでPPSV23とPCV13の接種歴がない,また接種歴不明の65歳以上の成人に対して,PCV13接種6~12カ月後にPPSV23を追加接種するスケジュールを推奨している(図2)1)。COPD患者の場合,19~64歳の間にPPSV23を1回接種し,65歳を過ぎた段階で,①PCV13(最終PPSV23接種から≧1年),②PPSV23(①から≧6~12カ月,かつ,最終PPSV23接種から≧5年)の順で接種する。
わが国では,PPSV23は2014年10月より65歳以上の成人を対象とした予防接種法に基づく定期接種が開始された。PCV13に関しては,2014年6月から65歳以上の成人に適応が拡大され,任意接種ワクチンとして使用が可能となった。これらの状況を受け,日本呼吸器学会と日本感染症学会は合同で,2015年1月に「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方」を発表した(p29参照)5)。
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