小児の食物アレルギーは多くが自然寛解するが,持続する例も少なからずあり,長期管理の薬物治療は存在しない。そこで,最近は経口免疫療法が試みられるようになった。ガイドラインによる経口免疫療法の定義は「自然経過では早期に耐性獲得が期待できない症例に対して,事前の食物経口負荷試験で症状誘発閾値を確認した後に原因食物を医師の指導のもとで経口摂取させ,閾値上昇または脱感作状態とした上で,究極的には耐性獲得をめざす治療法」とされている1)。
すなわち,負荷試験で症状を起こさない量を決定後,さらに少ない量から経口摂取を開始して連続的に摂取量を増やしていくと,閾値量を超え,さらに通常の摂取量まで増やしても誘発症状が出ない「脱感作」という状態が得られる。そして,どのような状況でもまったく症状が出ない「耐性」という状態をめざす治療である。しかし,治療過程での誘発症状は,軽微なものを含めて避けられず,時に重篤な症状が起こる。また,全例が「脱感作」に到達できるわけではなく,真の「耐性」獲得はさらに困難である。そのため現在は,標準治療としては推奨されず,倫理委員会の承認を得た上で行う研究的治療という位置づけである1)。
しかし,誤摂取によるアナフィラキシーのリスクにさらされ,不自由な除去食を強いられる重症食物アレルギー児には福音であり,今後の発展が期待される。
【文献】
1) 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会:食物アレルギー診療ガイドライン2016. 協和企画, 2016.
【解説】
長尾みづほ 国立病院機構三重病院アレルギーセンター/ 臨床研究部室長