大腿を水平まで上げる足踏み(水平足踏み)には,腸腰筋などの筋力が必要である。25歳以上69歳未満の146例中,週2回以上,持続時間30分以上,継続期間1年以上の運動を行っている者を「運動習慣あり」群とし,それ以外の者を「運動習慣なし」群とした。20秒水平足踏み回数は「運動習慣あり」群と「運動習慣なし」群の間で有意差はなかったが,ウォーキングやゴルフなどの歩行中心運動を習慣とする9例を除く「運動習慣あり」群の20秒水平足踏み回数は,「運動習慣なし」群より有意に多かった。ウォーキングやゴルフなどを習慣とする者には水平足踏み訓練の併用が必要である。
高齢化が進む現在,予防医学の観点から家庭で簡単にできる筋力訓練が重要である。加藤1)は本誌に,大腿を水平まで上げる足踏み(水平足踏み)の回数を漸増し,1日300回まで行う訓練は,全身の血行状態を改善させることによって高血圧や狭心症などの虚血性心疾患に著効すると報告した。
上原ら2)は,水平足踏みの速度と腸腰筋力,大腿四頭筋力には相関があると報告した。変形性膝関節症(膝OA:osteoarthritis)では大腿四頭筋力が低下するため3),膝OA患者は膝関節に疼痛を感じない人より水平足踏みの速度が遅い可能性がある。
湯ら4)は,40歳代から定期的かつ持続的にスポーツを実践した8人を8年間追跡調査した。その結果,水平足踏みの速度は8年前に比べて平均20.75%増加していた。この結果から彼らは,定期的かつ持続的な運動は,高齢化の影響に逆行して水平足踏みの速度を改善させると考察した。しかし,腸腰筋力や大腿四頭筋力の訓練にならない運動を行っても水平足踏みの速度は改善しない可能性がある。
今回の研究では,①初期膝OA群と,年齢や性別の分布が同等で膝に痛みがないコントロール群の間における水平足踏みの速度の違い,②散歩やゴルフなど大腿を水平に上げる動作が少ない運動習慣が水平足踏みの速度に与える影響,を検討した。
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