1965年に小松と玉井が世界で初めて完全母指切断の再接着に成功した。その後,手術器具や顕微鏡の開発と改良,手術手技の進歩により,切断指再接着の生着率は飛躍的に向上しており,現在では多くの施設で一般的な治療として行われている。また最近では,スーパーマイクロサージャリー技術の確立により,外径0.5mm程度の血管吻合が可能となり,従来では血管吻合が困難であった指尖部切断(DIP関節以遠)においても,再接着治療が可能となっている。
労働災害の減少により切断指全体の症例は減少傾向にあると言われているが,労働災害以外でも生じうる指尖部切断は減少していないと考えられている。指尖部治療においては,切断指の挫滅が強く再接着が困難な場合でも,爪と骨のみを移植し局所皮弁と組み合わせて指尖部を再建する方法などにより,爪を含めた整容性に配慮した治療が行われている。
切断指再接着後の予後においては,知覚の獲得が重要な要素であり,鋭的切断により直接神経断端を縫合できた場合,知覚の回復は十分に期待できる。挫滅が強く神経の欠損が生じた症例に対しても,2013年に認可された神経再生誘導チューブの使用により,一次的な神経再建が可能となってきている。
切断指の治療の焦点は,再接着の生着率を高めることから,より機能と整容性を高めることへと移ってきている。
【解説】
大崎健夫*1,寺師浩人*2 *1神戸大学形成外科 *2同教授