柔道整復療養費の不正対策が厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会専門委員会で議論されている。今年まで5年間有識者委員を務めた相原忠彦氏に柔道整復療養費の問題点について聞いた。
健康被害に関しては、まず柔整療養費の支給対象が不明確という問題があります。
柔道整復師法に柔整師の業務範囲は書かれていませんが、法案提出理由の中に「骨折、脱臼の非観血的徒手整復を含めた打撲、捻挫など新鮮なる負傷に限られている」とあります。これにより支給対象は「新鮮外傷」と考えるのが妥当ですが、1997年に厚労省は保険局医療課長通知で支給対象について「急性または亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲および捻挫」と示し、突然、「亜急性の外傷」が出てきたのです。そして2003年に政府は答弁書でこれを追認しました。こうして「亜急性の外傷」の定義が曖昧なまま運用され、医学的には「障害」の疾患も亜急性の外傷として施術されるようになってしまいました。この中には様々な慢性疾患が含まれており、健康被害も生じています。
日本臨床整形外科学会は1988年から医業類似行為の健康被害調査を行っています。最新調査(2014年7月〜16年12月)では、494件の被害報告のうち446件が柔整師の施術によるものでした。この中には非外傷性疾患に対する施術が299例含まれています。施術による骨折は16例、骨折見逃しは52例報告されました。
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