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(2)高尿酸血症とCKD:病態と治療 [特集:高尿酸血症からアプローチする生活習慣病の治療]

No.4787 (2016年01月23日発行) P.26

内田俊也 (帝京大学医学部内科学講座教授(腎臓内科))

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-27

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  • 高尿酸血症はCKDの発症および進展因子である可能性がある

    高尿酸血症は高血圧,糖尿病,脂質異常症,肥満などのメタボリックシンドロームと密接な関係を有する

    高尿酸血症の治療は食事療法から始め,不十分であれば病型に応じた薬剤選択を行う

    CKDの進展阻止のための尿酸管理目標値は6.5mg/dL未満である

    1. CKDと高尿酸血症

    CKDに無症候性の高尿酸血症を合併する割合はきわめて高い。高尿酸血症が原因としてCKDの発症・進展に関与している可能性も指摘されており,両者は悪循環を形成すると思われる。もしそうであるならば,腎機能低下を伴う無症候性の高尿酸血症に対しても積極的な介入が必要となるが,いまだそのエビデンスは十分とは言えない。
    一方,腎機能低下を伴う痛風患者に対しては,従来通り積極的に治療していくべきである。特に痛風発作を起こした際のNSAIDsの使用は腎機能を悪化させる可能性が高く,禁忌ですらある。本稿ではこのような注意点を念頭に置いて,腎機能低下を伴う高尿酸血症・痛風患者の治療方針について記す。

    2. 高尿酸血症・痛風による腎障害の病態

    高尿酸血症が腎に及ぼす影響としては,従来から痛風との関わりで論じられてきたが,最近は痛風を伴わない無症候性の高尿酸血症による腎障害が注目されている。痛風腎は痛風に合併して生じる腎障害と定義されてきた。すなわち痛風関節炎を呈する患者が長期にわたって痛風を罹患した結果生じる腎障害のことである。痛風の原因とされる尿酸結晶は特有の針状結晶で,血清尿酸値が6.8mg/dL以上で析出するとされる。したがって,痛風腎ではこの尿酸結晶が腎の尿細管腔や間質に析出,あるいは沈着するために発症すると考えられてきた。その結果,腎機能が低下し,最終的に末期腎不全に至るというものである。
    2014年末の日本透析医学会の透析患者数の統計1)によると,現在の透析患者数32万448名のうち痛風腎によるものは1113名(0.4%)とされ,1年間の新規導入患者では3万6000名のうちわずか73名(0.2%)とされている。しかし,痛風腎のみで末期腎不全になるというよりは,多くの患者がメタボリックシンドロームを合併しており,糖尿病,高血圧,脂質異常症などによる腎不全進行も密接に関係している可能性がある(図1)2)。したがって,透析導入時の原因疾患としては,痛風腎以外の疾患になっているものと思われるが,痛風の患者数自体は現在でも約90万人であり,その10倍の数の高尿酸血症患者がいると試算されており,痛風腎あるいは高尿酸血症を原因とした腎障害の可能性を過小評価してはならないと思われる。
    最近の研究では,高尿酸血症自体で炎症反応が生じ,血管内皮細胞あるいは血管平滑筋が障害を受けるという。実際,高尿酸血症では,腎糸球体の輸入細動脈の肥厚が観察され,レニン分泌が亢進しているとされる。このように,レニン・アンジオテンシン系,酸化ストレス,COX-2活性化など炎症に関わる因子が活性化されるために,腎間質の炎症が生じるという考えが受け入れられている。

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