No.4886 (2017年12月16日発行) P.65
倉智雅子 (新潟リハビリテーション大学大学院リハビリテーション研究科教授/副学長)
登録日: 2017-12-18
最終更新日: 2017-12-12
(東京都 F)
加齢に伴う嚥下機能低下(presbyphagia:老嚥)に対してお勧めしたいのは,「舌」と「舌骨上筋群」の筋力を高める運動です。舌は,摂取物(食塊)の咽頭への送り込みと,食塊を食道に押し込む駆出力(咽頭の嚥下圧)の源で,舌骨上筋群(中でもオトガイ下筋群)は嚥下時(いわゆる“ゴックン”に相当する嚥下咽頭期)に舌骨を前上方に牽引し,結果的に舌骨に連結している喉頭を前上方に挙上させて気道の閉鎖と食道入口部の開大を導く原動力です。食塊を押し込む力,気道を閉鎖する力,食道入口部を開く力を強化することで,嚥下運動の予備能力が高まり,より安全で確実な嚥下ができます。
舌の筋力強化には,舌を口蓋に持続的に押し当てる等尺性運動が効果的で1),最大舌圧の6割以上の負荷による運動が推奨されています。市販の舌トレーニング用具や装置を利用すると負荷量を調整した漸増的抵抗運動が可能ですが(ジェイ・エム・エス社「ペコぱんだ®」,Swallow Solutions「SwallowSTRONG®」など),定量性にこだわらなくても,運動を心がけること自体が大切と言えます。
①舌抵抗運動
舌を数秒間硬口蓋に強く押しつける動作×5~10回を1セットとし,1日3セット,週3日以上,6~8週間継続します。
②アンカー強調嚥下
嚥下時に起こる前舌部と口蓋の接触(食塊送り込み運動の基点/アンカー)を嚥下が終了するまで強固に維持すると,嚥下中の咽頭圧を高められます。唾液で練習できるほか,実際の摂食時にも使えます。
残り898文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する