我が国では急速に高齢化が進み、団塊の世代がすべて後期高齢者となる2025年に向けて、ますます多死社会となる。日本政府は、早期の在宅復帰を実現し、医療費の伸びを抑制するために、2008年度を初年度とする医療費適正化計画を経済政策として掲げた。その政策の1つが平均在院日数の短縮に向けた取り組みである。一般病床の平均在院日数は2015年に16.5日となり、さらに毎年徐々に短縮している。
急性期病院では、入院目的となった医療を速やかに成功裏に成し遂げ、生活レベルを落とさずに元いた地域に戻すことが望まれる。急性期医療を担う当院でもこれまで、退院の時期を逃し、入院日数が延長される事例にしばしば遭遇した。
その大きな要因として、①日常生活動作(ADL)の低下、②摂食嚥下機能障害に伴う栄養状態の悪化、③入院前の居住区に戻れず新しい退院先も決まらない社会的事情の3つが挙げられる。当院の理念でもある、信頼され愛される病院となるためには、入院した時から地域での生活を見据え、入院関連機能障害の予防、ADLの維持・向上に必要なリハビリテーションと栄養を含むケア、および速やかな退院支援と調整が必要と考えられる。
そこで、この目的を達成するため、各職種がそれぞれ専門的な視点から速やかに患者を初期評価し、入院後早期から退院を妨げるリスク要因を共有した。そして、早期の適切な時期に望まれる状況で退院するための支援を各職種が協働して実現するためのシステムを構築し、運用した。
ポリペクトミー、血管内治療、化学療法などのクリニカルパスを用いた短期入院を除くすべての入院患者を対象に、2016年8月、入院時から多職種で取り組む新しい退院支援システムを導入した。システムの概要は以下の2点である。
(1)アナムネ用紙と各スクリーニングシートの見直し(アナムネ用紙は、入院時に患者または家人が記入し、その内容を基に病棟看護師がスクリーニングシートに入力する)
①新たに栄養・摂食嚥下、ADLスクリーニングシートを作成した。専門職の評価・介入が必要な患者を入院時に抽出することを目標に、シートの内容を各職種間で話し合って決定した。
②栄養・摂食嚥下スクリーニングシート(図1)は、あらかじめ要注意項目に色づけをし、色づけ項目が1項目でもチェックされた場合には、栄養士介入依頼、摂食嚥下評価依頼を行うこととした。
残り2,352文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する