わが国の予防接種制度は,海外先進国に比較すると立ち遅れており,「ワクチンギャップ」が指摘されてきた。近年,小児ではインフルエンザ菌b型,肺炎球菌,ヒトパピローマウイルス,水痘,B型肝炎が定期接種対象疾患となり,公費助成ワクチンのギャップは解消されつつある。2017年9月に日本耳鼻咽喉科学会は「15年からの2年間で,ムンプス難聴と診断された患者は,全国の耳鼻咽喉科医療機関3536施設から336人が報告された」と発表した。このような後遺症をなくすためには,ムンプスワクチンを早期に定期接種化する必要がある。
2000年初めの定期接種ワクチンの対象は8疾患であったが,17年10月現在,13疾患まで増えている。混合ワクチンとしてはMR(麻疹+風疹),4種混合(ジフテリア+百日咳+破傷風+不活化ポリオ:DPT-IPV),2種混合(ジフテリア+破傷風:DT)ワクチンが導入されている。接種すべきワクチンの種類の増加に伴い接種回数も増加した。1歳未満では定期接種ワクチンだけでも13回の接種が必要である。限られた期間内に各ワクチンの接種間隔の規定に従い,児の体調に合わせて接種するには,複数の異なるワクチンを同時に接種する「同時接種」が有効な手段である。日本小児科学会は「必要な医療行為である」との考え方を示しており1),同時接種が浸透しつつある。被接種者の負担を軽減するために,有効で安全な混合ワクチンのさらなる開発が求められる。
【文献】
1) 日本小児科学会:日本小児科学会の予防接種の同時接種に対する考え方. 2011. [https://www.jpeds.or. jp/uploads/files/saisin_1101182.pdf]
【解説】
橋本浩一*1,細矢光亮*2 *1福島県立医科大学小児科准教授 *2同主任教授