出産年齢の高齢化により,高血圧合併妊娠は増加傾向にある
高血圧合併妊娠は加重型妊娠高血圧症候群を発症しやすく,母児双方の予後は正常妊娠と比較して悪い
高血圧を有する妊婦における降圧治療の特殊性は,一言で言えば「胎児の存在」といえる。胎児が存在するために,降圧薬の選択や降圧レベルに制限が加えられる。これが,内科領域の降圧治療と根本的に違う点である
非妊婦での家庭血圧における高血圧の診断基準は135/85mmHg以上とされているが,妊婦の高血圧の基準値はそれより低い可能性がある
1950年以降10年おきにみた第1子出産年齢のピークは,1970年までは20~24歳であったものが,1980年になると25~29歳となり,2010年では25~29歳と30~34歳がほぼ同数となり,2011年以降は30~34歳がピークとなった1)。埼玉医科大学総合周産期母子医療センターでは,原則として正常妊娠を取り扱わず,ほとんどの症例が何らかの合併症を有している。このため,高齢出産の割合が高く,1990年代から既に第1子出産年齢のピークは30~34歳で,2010年からは35~39歳がピークとなっている。母体年齢の高齢化は合併症増加の主要な原因の1つで,高血圧は高齢化により発症頻度の増える代表的な疾患の1つである。
「平成22年国民健康・栄養調査結果の概要」2)によれば,30~39歳の女性の高血圧症有病者(収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上,もしくは降圧薬を服用している者)の割合は4.0%であり,医療機関や健診で「高血圧」と言われたことがある30~39歳の女性の平成22年(2010年)の割合は4.4%であった。この統計には20歳代の高血圧症有病者のデータがないが,栃木県のデータ3)(20歳代の女性の高血圧症有病率は1%)を併せて高血圧合併症妊婦の数を推定すると,およそ3万3000人と考えられ,わが国における高血圧合併妊娠は全分娩数の約3%となる。