昨年のACCで報告されたFOURIER試験において、安定冠動脈疾患例への上乗せにより心血管系(CV)イベント抑制作用を示したPCSK9抗体だが、本年のACCでは心筋梗塞(MI)亜急性期における有用性が、ランダム化試験“ODYSSEY Outcomes”の結果、示された。パリ・ピシャ病院のPhilippe Gabriel Steg氏が報告した。
本試験の対象は、MI退院後、2週間以上の忍容最大用量スタチン服用にも関わらず、脂質代謝管理不良(LDL-C≧70mg/dL、非HDL-C≧100mg/dL、アポB≧80mg/dLのいずれか)だった1万8924例である。PCSK9抗体(アリロクマブ75mg/2週)群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で追跡された。
PCSK9抗体の用量75mgから開始し、試験開始2カ月後以降は到達LDL-C値「<50mg/dL」例が最多、「<15mg/dL」例が最少となるよう、LDL-C値に応じて「盲検下」で、150mgへの増量、75mgへの減量、休薬(プラセボに切り替え)などの調節が行われた(試験開始2、4カ月後、以降は4カ月おきに調節。2年経過後は6カ月おき)。
その結果、中央値2.8年間の観察後、1次評価項目である「冠動脈死・心筋梗塞・不安定狭心症入院」の発生率はPCSK9抗体群で9.5%と、プラセボ群の11.1%に比べ有意に低値となっていた(ハザード比:0.85、95%信頼区間:0.78-0.93)。両群のカプランマイヤー曲線が乖離し始めたのは、試験開始後1年が経過してからである。試験開始時LDL-C値の高低は、PCSK9抗体の上記作用に有意な影響は与えていなかった。なお本試験では、前出のFOURIER試験では観察されなかった総死亡の有意減少も認められている(3.5% vs. 4.1%)。
有害事象は、注射部位反応がPCSK9抗体群で有意に多かったのを除き、神経認知機能障害や白内障を含め、両群間に有意差はなかった。