わが国では先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染の発生は新生児300人に1人で,毎年およそ1000人の乳幼児が後遺症を残す。妊婦の抗体保有率は60~70%で,IgG陰性妊婦の1.5%が妊娠中にCMV初感染を起こし,その40%が胎児感染に至る。胎児感染の20%が症候性,80%は無症候性の先天性感染児として出生する。症候性児の90%,無症候性児の10~15%が神経学的後遺症を残す。また,非初感染妊婦の0.5%がウイルス再感染や再活性化によって先天性感染を起こす。
神戸大学の妊婦2193人を対象にCMV抗体スクリーニングを行ったところ,初感染妊婦から3人の先天性感染児(症候性1人,無症候性2人)が出生した。加えて,非初感染妊婦から7人もの感染児(症候性3人,無症候性4人)が出生した1)。これまで,先天性感染児は初感染妊婦からより多く出生し,重症であると考えられてきた。前向き研究によって,妊婦抗体スクリーニングは,先天性感染児の半数以上を占める非初感染母体からの感染児を見逃すことがわかった。
新生児1万356人を対象に濾紙尿PCRスクリーニングを実施した。症候性感染児にバルガンシクロビル16~32mg/kgを6週間投与した。先天性感染児は48人で,症候性22人中18人に治療を行った結果,重度後遺症43%,軽度後遺症14%,正常発達43%であった。感染児の正確な診断と適切な治療によって,後遺症が減少する可能性を示した。新生児尿CMV抗体スクリーニングは有用である。
【文献】
1) Tanimura K, et al:Clin Infect Dis. 2017;65(10): 1652-8.
【解説】
山田秀人 神戸大学産科婦人科教授