てんかん発作は痙攣発作を意味すると考えられやすい。しかし痙攣のない発作が5分以上,持続,反復する非痙攣性てんかん重積状態(NCSE)は,頭蓋内外の疾患により凝視,異常言動,失語症,認知症,昏睡,心肺停止などを呈し,多くは治療可能だが通常見逃されている。
一般市民のみならずほとんどの臨床医も,てんかん発作は痙攣発作を意味するものと考えてきた。神経系専門医であっても,非痙攣性てんかん発作(nonconvulsive seizure;NCS)およびNCSが持続あるいは反復する重篤な状態であるNCSE(nonconvulsive status epilepticus,正確には非痙攣性てんかん発作重積状態であろう)の認識は不十分である。またその概念が認識されていても,日常臨床上,NCSとNCSEが鑑別診断に加えられることは少なく,たとえ加えられても,特発性てんかんとしての複雑部分発作や欠神発作の想起にとどまることが多い。
てんかん発作には全身痙攣発作のように誰にでも明らかな発作もあれば,複雑部分発作のように意識減損が主体で痙攣を呈さない発作,単純部分発作のうちの感覚発作や精神発作のように主に患者本人が知覚する発作もある〔複雑部分発作,単純部分発作は国際抗てんかん連盟(International League Against Epilepsy;ILAE)による旧分類であるが,現在も頻用される〕。このうち痙攣発作を伴わない発作をNCSと呼ぶ。
NCSEは,主に複雑部分発作あるいは単純部分発作が5分以上持続するか,回復なく5分以上反復する状態である(2012年のNeurocritical Care Societyによる,てんかん重積状態の定義に基づく)。
NCSEの基礎疾患には,急性心停止,急性脳症,脳血管障害,中枢神経系の感染症,腫瘍,外傷,術後など多くの病態がある1)。
ICU入室例の検討では低・無酸素42%,脳血管障害22%,感染症5%,頭部外傷5%,代謝障害5%,アルコールや抗てんかん薬からの離脱5%,腫瘍5%の順で,原因不明例11%であった2)。
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