消化器外科の先生方には、平素より大変お世話になっております。胃切除術後にビタミンB12欠乏をきたすことがあるのは、消化器外科の先生方には常識として受け入れられていると思います。実際、胃全摘患者の100%、幽門側胃切除患者の15.7%に、4年以内にビタミンB12欠乏がみられたとの報告がございます。
ビタミンB12欠乏が引き起こすのは、認知機能障害、亜急性連合性脊髄変性症、末梢神経障害、大球性貧血、舌炎など多彩です。神経内科では、物忘れを主訴とした認知機能障害、歩行障害を主訴とした亜急性連合性脊髄変性症、しびれを主訴とした末梢神経障害などをしばしば見かけます。
印象的な症例は、亜急性連合性脊髄変性症の50歳代の女性にビタミンB12を補充した後、「バックで車庫入れができなくなっていたのが、またできるようになった」と言われたことです。この方は、軽微ながらビタミンB12欠乏に伴う認知機能障害も併存したのでしょう。
ビタミンB12欠乏は適切に診断されなければ、約6%の患者に神経学的な後遺症が残るとされています。診断と治療が 6カ月遅れると、障害は不可逆的になりやすいことも知られています。
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