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一般診療科におけるうつ病診療 身近な「うつ」への対処法 [学術論文]

No.4695 (2014年04月19日発行) P.30

河野敬明 (東京女子医科大学神経精神科)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-04-05

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  • 近年「うつ」を含む精神疾患は増加の一途にあり,その対処は国の重点課題の1つとなっている。「うつ」は一般診療科でも出合う機会が多い病態である。うつを長引かせず回復させるために,うつ状態の適切な鑑別と対処が重要である。「うつ」の代表的な疾患であるうつ病を中心に,うつ状態への対処法を述べる。

    1. 日常診療でうつ病に出合うことは珍しくない

    厚生労働省(厚労省)は2011年,既存の4大疾病(がん,脳卒中,急性心筋梗塞,糖尿病)に精神疾患を加えて「5大疾病」とし,重点対策を進める方針を発表した。背景には精神疾患患者数の急増がある。厚労省の調査では精神疾患患者数は300万人を超え,他の4大疾病よりも多い。原因として職場におけるうつ病の増加や認知症の増加などが挙げられている。
    うつ病の生涯有病率は10%前後と言われ,ありふれた疾患である。様々な身体症状を主訴に一般診療科を受診するケースも多く,最初から精神科を受診する人は数割程度にとどまる。
    自殺問題も重点課題とされている。自殺者は毎年3万人前後であるが,その90%が何らかの精神疾患に罹患しており,うつ病を含む気分障害が30%程度を占めると言われている。また,自殺者の50%前後が,自殺する半年以内に一般診療科を受診しているというデータもある。
    このように,一般診療科の診察場面でうつ病に出合うことは珍しくない。本稿では一般診療科におけるうつ病への対処法について述べる。なお,治療の部分などは「日本うつ病学会治療ガイドライン2012」をベースにしている。オンラインで誰でも参照可能である。

    2. うつ状態の把握・問診

    日常診療で出合う「うつ」はうつ病だけではない。一般に「うつ」と言うとき,うつ病を含む「うつ状態」を意味していることが多い。うつ状態は心身のエネルギーが低下した場合に起こる。抑うつ気分,興味の喪失,集中力低下,気力低下,食欲低下,睡眠障害などの精神症状がみられるが,様々な身体症状がみられる場合も多い。ケースによっては,抑うつ気分などの精神症状よりも身体症状の訴えが目立つこともあり,注意が必要である。一般診療科を受診したうつ状態患者が訴える愁訴を,表1に示した。


    このような身体症状を呈するが身体疾患が見当たらない場合,精神疾患の可能性を念頭に置いた対応が必要である。一方,うつ状態での精神症状の表現も患者により様々である。単に「憂うつ」という表現だけにとどまらないことも多い。患者はどのような表現をするのか,例を挙げてみた(表2)。


    他覚的には,問いかけに対する反応の鈍さ,ゆっくりとした話しぶりや動作などが認められる。循環思考では話が堂々巡りになり,説明を聞いているように思われても不調などの訴えを際限なく繰り返す。また,先行きの暗さにこだわり,過去の小さな失敗や些事に固執し,不安や焦りを訴えることがあり,自殺企図に結びつきやすいため,家族など周囲のサポートの確認を行う。

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