株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

わが国における脳卒中の最近の動向 [学術論文]

No.4706 (2014年07月05日発行) P.25

山口修平 (島根大学医学部内科学講座内科学第三教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-28

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • next
  • 脳卒中データバンクに登録された11万例余りの急性期脳卒中症例の解析に基づき,最近14年間の脳卒中の動向について解説する。脳卒中病型のうち心原性脳塞栓症が人口の高齢化とともに増加している。また,高血圧性脳出血の割合も増加している。t-PA治療は虚血性脳卒中患者の5%程度に実施され徐々に増加はしているが,発症から受診までの時間はt-PA治療認可前後で短縮は認められていない。t-PA治療の適応時間が発症後4.5時間に拡大されたが,早期受診の啓蒙がさらに必要である。

    1. 依然,脳卒中は医学的・医療経済的重要疾患

    平成23(2011)年度の厚生労働省の統計によると,脳血管疾患による死亡患者数は12万人余りで全死亡患者数の約10%を占め,死亡原因の4位に挙げられる。脳卒中の病型別に見ると,脳梗塞による死亡は7万3000人,脳出血による死亡は4万8000人とされる。さらに,脳卒中は介護が必要となった原因疾患の27%を占め,衰弱,転倒・骨折,認知症などを上回り最大の原因となっている。医療費の面から見ても,脳卒中全体で1兆7691億円〔平成22(2010)年度〕と増加を続けている。このように,脳卒中は医学的・医療経済的に依然としてきわめて重要な疾患と言える。

    2. 脳卒中データバンクの目的と意義

    脳卒中データバンクは,脳卒中の急性期治療の標準化と,日本人における脳卒中治療のエビデンスの検証と確立を目的として小林ら1) 3) が開発した登録型データベースである。現在,Japan Standard Stroke Registry Study group(JSSRS group)により運営され,日本脳卒中協会内に事務局が置かれている。1999年から本格的に症例の登録が開始され,2013年2月までに全国93施設から11万例以上の急性期脳卒中患者の登録がなされている。
    脳卒中データバンクへの登録は全国の急性期脳卒中を扱う施設により行われているが,ある程度の地域差が見られる。具体的には北海道19%,東北7%,関東21%,北陸0.2%,中部2%,近畿11%,中国25%,四国2%,九州13%,沖縄0.2%であり,全体として見れば東日本と西日本の登録数はほぼ同等である。このデータベースは,現在参加登録施設の研究者により解析が進行しており,2014年には詳細な解析結果が発表される予定である。これまでに2003年,2005年,2009年の時点での解析結果が,それぞれ『脳卒中データバンク』として発表されており,わが国の脳卒中医療の現状把握に貢献している1)~3)
    本稿では,2012年末までに集積されたデータをもとに,脳卒中の疫学に関する最新の知見と,超急性期脳梗塞治療,特に2005年から始まった組織プラスミノーゲン活性化因子(tissue plasminogen activator:t-PA)治療の現況についての解析の一部を紹介する。

    残り3,925文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top