パーキンソン病(PD)は病理学的に,中脳黒質ドパミン神経でのα-シヌクレイン(αSyn)蓄積および神経細胞死が特徴である1)。現在のPDバイオマーカー開発は,主に①黒質─線条体のドパミン産生細胞の神経障害を反映するもの,②αSyn蓄積を検出するもの,が中心であると言える。
①では最近,保険適用となった脳ドパミントランスポーターシンチ(DAT scan)が挙げられる。DAT scanは臨床的にきわめて早期の患者を検出することが可能であると同時に,病態進行の追跡も可能なよいマーカーである2)。また,髄液中のリン酸化タウやリン酸化ニューロフィラメントなどの生化学的マーカーが,神経障害の程度と相関すると報告され,病勢マーカーとして期待されている。
②ではMIBG心筋シンチグラフィーが代表的である。PD患者の心臓交感神経節には,病初期よりαSynが蓄積することでMIBG集積低下が認められる。中枢のαSyn蓄積を反映するバイオマーカーとして,京都府立医大の徳田らは,PD患者では髄液中の正常なαSynは低下し,オリゴマーが増加することを見出した3)。近年では髄液中のαSynを増幅して高感度に検出するRT-QuIC法が開発されており,より直接的に中枢神経系におけるαSynを定量評価する方法が開発され注目されている4)。
【文献】
1) Spillantini MG, et al:Nature. 1997;388(6645): 839-40.
2) Sierra M, et al:Neurology. 2017;89(5):439-44.
3) Tokuda T, et al:Neurology. 2010;75(20):1766-72.
4) Shahnawaz M, et al:JAMA Neurol. 2017;74(2): 163-72.
【解説】
池中建介*1,望月秀樹*2 *1大阪大学神経内科 *2同教授