編集: | 阿部好文(医療法人社団白寿会 田名病院 院長) |
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判型: | 菊判 |
頁数: | 256頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2007年04月25日 |
ISBN: | 978-4-7849-1530-9 |
版数: | 第1版 |
付録: | - |
病態生理を軸として、疾患をより良く理解するためのシリーズです。「医学教育モデル・コアカリキュラム」に示された疾患と症候について、初学者向けにやさしく解説しました。いかにして正常機能の破綻が起こり、どのような変化(症候,検査)が現れるかを理論的に学んでいきます。疾患の成り立ちをしっかり理解して、診断学・治療学の基礎を身に付けてください。
診療科: | 内科 | |
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代謝内分泌・糖尿病 |
シリーズ: | よくわかる病態生理 シリーズ |
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第1章 視床下部・下垂体疾患
視床下部-下垂体系の構造と機能
視床下部・下垂体ホルモンの作用と分泌調節
クッシング病
先端巨大症
汎下垂体機能低下症
尿崩症
ADH不適切分泌症候群
高プロラクチン血症
低身長をきたす疾患
下垂体腫瘍
第2章 甲状腺疾患
甲状腺濾胞の構造と機能
甲状腺ホルモンの作用と分泌調節
甲状腺腫
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)
甲状腺炎
甲状腺機能低下症
甲状腺癌
第3章 副甲状腺疾患とCa代謝異常
副甲状腺ホルモンとCa代謝
副甲状腺機能亢進症・低下症
悪性腫瘍に伴う高Ca血症
偽性副甲状腺機能低下症
第4章 副腎疾患
副腎の構造とホルモン生合成
グルココルチコイドの分泌調節と作用
RAA系によるアルドステロン分泌調節
クッシング症候群
原発性アルドステロン症
褐色細胞腫
副腎不全
先天性副腎皮質過形成
第5章 性腺疾患
性ホルモンの作用と分泌調節
月経異常
性の分化・発育・成熟の異常
第6章 糖代謝異常
糖質の代謝経路と脂質・蛋白質との相互作用
膵島ホルモンと血糖値の調節機構
糖尿病の病態と診断
糖尿病の治療
糖尿病の急性合併症
糖尿病の慢性合併症
低血糖症
第7章 脂質代謝異常
脂質の代謝経路
高脂血症
肥満とやせ
第8章 蛋白質および核酸代謝異常
蛋白質の代謝経路
血漿蛋白質の異常
アミロイドーシス
核酸の代謝経路
高尿酸血症・痛風
第9章 ビタミンの欠乏・過剰
脂溶性ビタミン
水溶性ビタミン
第10章 先天性代謝性疾患
先天性アミノ酸代謝異常症
ヘモクロマトーシス
ポルフィリン症
Wilson病
編集にあたって
5年ほど前までは、日本の医学部のカリキュラムは解剖学、生理学、生化学などの基礎医学教育を学んでから、内科、外科、小児科などの臨床医学教育が始まるという形であった。しかし海外では10年以上前から、基礎医学教育と臨床医学教育の授業をくさび型に組み合わせた統合的なカリキュラムが用意され、医学生は1年生の時から診療の見学が始まり、卒業直前にも遺伝子など最新の基礎医学の実習があるといった教育を受けている。最近やっと日本でもその流れに沿って、基礎と臨床が統合された授業が行われるようになった。その場合、基礎と臨床の間をつなぐ鎖の1つが「病態生理」である。
特に内分泌・代謝性疾患は、病巣が比較的わかりやすい心臓疾患や消化器疾患と異なり、全身倦怠感、体重減少、筋力低下といった全身症状が主となっているので、症候からいくつかの疾患を推定し、その病態生理を考えながら臨床推論を進めるといった手法をとらないと病巣に到達できない。その意味で、内分泌・代謝性疾患の病態生理は単に国家試験に合格するための知識ではなく、臨床医に必須の知識の1つといえよう。
ところが今まで、内分泌・代謝性疾患の病態生理を正面から取り上げた教科書はなかった。それは結局、「発症機序はなにか」とか「この症状を起こすメカニズムはなにか」とかいう問いに正確に答えることは難しく、「まだよくわかっていない」という答えになってしまうことが多いためだと思われる。しかし最近、いくつかの内分泌・代謝性疾患の発症機序が遺伝子レベルでわかり、病態への理解も深まってきた。そこで、現時点でわかっていることという制限付きであるが、できるだけ最新の知見をわかりやすく臨床に結びつけた形で解説してみた。したがって、稀な疾患の個々の原因を暗記するといった使い方ではなく、本書により内分泌・代謝性疾患の病態生理の原理・原則を理解してもらえれば幸いである。
相模川のほとりで
阿部好文