編集: | 中島宏昭(昭和大学横浜市北部病院教授) |
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判型: | 菊判 |
頁数: | 216頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2008年08月30日 |
ISBN: | 978-4-7849-1590-3 |
版数: | 第1版 |
付録: | - |
病態生理を軸として、疾患をより良く理解するためのシリーズです。「医学教育モデル・コアカリキュラム」に示された疾患と症候について、初学者向けにやさしく解説しました。いかにして正常機能の破綻が起こり、どのような変化(症候,検査)が現れるかを理論的に学んでいきます。疾患の成り立ちをしっかり理解して、診断学・治療学の基礎を身に付けてください。
診療科: | 内科 | 呼吸器内科 |
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シリーズ: | よくわかる病態生理 シリーズ |
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第1章 画像診断の基礎
胸部X線検査
胸部CT検査
第2章 呼吸不全
血液による酸素と二酸化炭素の運搬
肺胞におけるガス交換と血流の関係
換気血流比が血液ガスに及ぼす影響
チアノーゼ
呼吸困難
呼吸不全
血液ガスの見方
第3章 呼吸器感染症
気道の構造
咳嗽・喀痰
急性上気道炎(かぜ症候群)
細菌性肺炎
非定型肺炎(異型肺炎)
肺結核
非結核性抗酸菌症
第4章 閉塞性肺疾患・拘束性肺疾患
呼吸機能からみた肺疾患
喘 鳴
慢性閉塞性肺疾患
気管支喘息
間質性肺炎
びまん性汎細気管支炎
石綿肺
放射線肺臓炎
第5章 肺循環障害
肺循環の特徴
肺性心
肺血栓塞栓症
原発性肺高血圧症
急性呼吸促迫症候群
第6章 免疫学的機序による肺疾患
気道と肺の防御機構
サルコイドーシス
過敏性肺臓炎
好酸球性肺炎
第7章 肺腫瘍
肺腫瘍
第8章 異常呼吸
呼吸の調節機構
過換気症候群
低換気症候群
睡眠時無呼吸症候群
第9章 気管支拡張症,無気肺
気管支拡張症
無気肺
第10章 胸膜・縦隔疾患
胸膜(胸腔)の構造
胸膜中皮腫
胸 水
気 胸
膿 胸
縦隔の構造と疾患
縦隔腫瘍
編集にあたって
呼吸器に起こる病気は多彩です。しかし、患者さんが訴える症状は多くありません。ほとんどの場合、「咳、痰、血痰、呼吸困難、胸痛、発熱」の単独か、これらの組み合わせです。したがって、呼吸器の症状があって家庭の医学書を読んだ患者さんは、ほとんどの病気が自分の症状のどれかにあてはまることになり、「きっと結核だ、いや肺癌に違いない」と恐怖に陥るのです。ここにプロとアマの違いがあります。プロはこれらの症状が「どんな起こり方をするか」を見極めることで、病気の種類を判断するのです。
どんな症状がどんな起こり方をするかは、その病気が呼吸器のどこに起こるかで決まります。咽頭、喉頭などの上気道か、気管から肺胞までの下気道か、肺胞と肺胞の間の間質(肺実質)に起こるのかで症状が異なるのです。なぜなら、それぞれの部位にはその働きのために必要な神経(痛み、咳など)、組織、筋、支持組織があるからです。
一般的にいえば、入口に近い部位ではまず痛みで外敵の侵入を感じ取ろうとしていますし、太い気管支では分泌物に包み込んで咳で排出しようとしています。間質には分泌腺はないので、空咳、呼吸困難が主な症状となります。このように体の部位の解剖と生理機能を知ることが病気を判断するのに大変重要なのです。
そしてもうひとつ大切なことがあります。それは相手の病気がどんな進行の仕方をしてくるかを知っていることです。たとえば細菌のように気道に沿って侵入してくるのか、間質性肺炎のように両側肺に同時に起こってくるものなのかなどです。このことは、胸部X線写真やCTを読むときにも大いに役に立ちます。
以上述べたことを頭の片すみに置いて、この本を読んでください。医師として大事なことは、自分のもっている知識を常に増やし、その知識を存分に使って目の前の出来事がどんな意味かを解釈し、良い方向にもっていく(治療)ためにどうするかを考えることです。皆さんの健闘を祈ります。
2008年7月
中島宏昭