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聴神経腫瘍に対する外科治療の適応とリスクについて

No.5182 (2023年08月19日発行) P.55

中村 元 (大阪大学大学院医学系研究科脳神経外科学講師)

安部 洋 (福岡大学医学部脳神経外科教授)

登録日: 2023-08-17

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  • 聴神経腫瘍に対しては,経過観察,定位放射線治療,外科治療といった3つの選択肢があり,各々にメリットとデメリットがあります。低侵襲治療が求められる昨今,どのような症例に対して外科治療が選択され,治療合併症を回避するためにどのような工夫がなされているのかをお教え下さい。
    福岡大学・安部 洋先生にご解説をお願いいたします。

    【質問者】中村 元 大阪大学大学院医学系研究科脳神経外科学講師


    【回答】

     【術者により成績が大きく異なり,術者や施設の特性をふまえて治療方針を検討する】

    聴神経腫瘍に対する手術は,顔面神経の機能温存が必要であり,症例によっては蝸牛神経,下位脳神経,外転神経,三叉神経,脳幹などの機能温存にも配慮が必要になるため,最も難しい手術のひとつと言えます。基本的には良性で緩徐に発育する腫瘍であるため,Koos grade Ⅰ〜Ⅱの小さな腫瘍は経過観察が選択されます。聴力温存目的に小さな腫瘍を摘出する場合がありますが,蝸牛神経の機能温存は顔面神経よりもはるかに難しく,熟達術者のみが行うべき治療です。Koos grade Ⅲ〜Ⅳの大型の腫瘍に対しては,若年者であれば可及的な腫瘍摘出,高齢者であれば患者の状態に応じて腫瘍部分摘出〜亜全摘をめざして手術を行います。長径2.5cm以下の腫瘍に対する定位放射線治療の腫瘍制御率は高いですが長期的予後が不明な点が多く,腫瘍の悪性転化や再発時の手術リスク増大などの問題があります。基本的に,若年者や放射線治療の効果が低い囊胞性腫瘍は摘出手術を第1選択としています。

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