慢性硬膜下血腫は硬膜下腔に血腫が貯留し脳を圧迫する病態で,高齢者に多く,軽微な頭部外傷に起因(1~2カ月後に発症)することが多い。症候性あるいは脳圧迫が強い場合は,比較的早期に外科的処置を行う。
血腫量が少ない場合は無症状のことも多い。頭痛,意識障害(混乱,意識喪失),麻痺や言語障害,吐き気や嘔吐,認知機能の低下,歩行困難などの症状が典型的である。時間をかけて頭蓋内圧が高くなるので,麻痺や歩行障害は徐々に悪化することが多い。高齢者では,麻痺が現れる前に認知機能障害が出現・増悪しやすく,その後急速な意識障害をきたすことがある。
高齢者(特に75歳以上),頭部外傷の既往,血液凝固障害,アルコール乱用,脳萎縮,抗凝固療法などのリスク因子がある患者に対して,慢性硬膜下血腫の疑いを持つ必要がある。
画像診断で確定される。頭部CTあるいはMRIにて硬膜下腔に三日月状の血腫を認める。血腫形成時期にもよるが,頭部CTでは低吸収から等吸収値として,頭部MRIでは低信号から高信号となって同定される。被膜(外膜)は造影される。血腫成分の違いから,液状成分と血球成分が分離したニボーを形成することもある。経過がきわめて長期なものは,線維性の隔壁や石灰化を認める。発生部位は,前頭,側頭,頭頂部にわたることが多く,通常は片側性であるが,両側性に発症することもある。
頻度は低いが小児に生じることがある。小児の慢性硬膜下血腫は特に2歳未満の乳幼児に好発し,原因として外傷が最も多い。臨床症状は,不機嫌・嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状,頭囲拡大,精神運動発達遅滞や痙攣発作などを呈する。虐待に起因するものが近年注目されており,頭蓋骨骨折や眼底出血など他の複合的所見を参考にする。
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