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くも膜下出血の早期経腸栄養管理について

No.5200 (2023年12月23日発行) P.54

森 久恵 (国立循環器病研究センター脳神経外科医長)

鈴木海馬 (埼玉医科大学国際医療センター 脳卒中外科講師)

登録日: 2023-12-22

最終更新日: 2023-12-19

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  • くも膜下出血では,早期経腸栄養管理を行うことが転帰に関係すると言われています。栄養管理の実際,特にスパスム期の栄養管理の最近の知見についてご教示下さい。
    埼玉医科大学国際医療センター・鈴木海馬先生にご解説をお願いします。

    【質問者】森 久恵 国立循環器病研究センター脳神経外科医長


    【回答】

    【高蛋白ホエイペプチド消化態栄養剤による,くも膜下出血の予後改善が示唆される】

    動脈瘤性くも膜下出血(aneurysmal subarachnoid hemorrhage:aSAH)を含む脳卒中急性期における低栄養状態は独立した予後不良因子とされており,早期経腸栄養の有効性が報告されています。しかし,早期経腸栄養における適切な栄養剤の選択に言及する報告は脳卒中領域では皆無です。aSAH後で最も予後に影響を与えるのは,症候性脳血管攣縮(symptomatic cerebral vasospasm:SVS)です。したがって,aSAH後の栄養管理はSVSをいかに抑えることができるかに照準を合わせた管理が重要と考えます。

    過去の報告では,血中アルブミンの維持は血管内の膠質浸透圧を高め,血管内脱水の予防が可能と考えられています。筆者は当施設の栄養サポートチーム(nutrition support team:NST)の専属医の資格を有し,患者の栄養状態をNSTで定期的に評価しており,実臨床において高蛋白質含有の抗炎症作用や抗酸化作用といった血中アルブミンの維持に有用な栄養剤を選択し,早期に開始すべきであると考えています。

    その根拠としては,高齢急性脳梗塞症例における乳清ペプチド消化態流動食の有用性についてのランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)での,抗酸化物質であるグルタチオンの増加やIL-6の減少が血中アルブミン維持に有用であるとの報告1)や,敗血症型マウスに高蛋白ホエイペプチド消化態栄養剤と標準蛋白質含有半消化態栄養剤を与え,抗炎症および抗酸化作用について検討した結果,ホエイペプチドによって抗炎症作用および抗酸化作用,高蛋白質付加によるアルブミンの維持が期待できるといった報告2)が挙げられます。

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