お知らせ
脳神経外科医の商売道具である“ハサミ”について
血管内治療が進歩し，開頭術を行う機会は減少してきていますが，直達術の技術の伝承は不可欠であると思います。特に日本の技術には世界が注目しており，外国からも見学者が訪れている札幌禎心会病院・野田公寿茂先生に，基本となる“ハサミ”について解説をお願いします。
【質問者】鈴木海馬 埼玉医科大学国際医療センター脳卒中外科講師
【回答】
【「道具の思想」を理解して正しく使用することが大切】
「形態は機能に従う」。建築家ルイス・サリバンの言葉で，デザインの美しさは機能に従うといったニュアンスで私の好きな言葉です。もともとは生物学の言葉で，個体は多用する器官が発達し，不要な器官が退化する「用不用説」から転用されたと言われています。
一般的に「道具」の世界においても，「形態は機能に従う」方向で発展させてきた歴史があります。それは逆に考えれば，ユーザー目線で「形態から機能を推測する」ことが可能であるということになります。「道具の思想」を理解することで，正しい使い方を身につけることは，ハサミに限らずすべての手術機器について当てはまる重要なことだと考えています。
前段が長くなりましたが，私達の使用している「上山式マイクロ剪刀」について，形態から機能，使い方について解説したいと思います。これはもともと，私の上司である上山博康先生により1980年代半ばに開発されたものです。最近では世界中で用いられており，販売は32カ国以上，北米の93教育施設のうち70施設以上で使用されています1）。
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