日本動脈硬化学会は5日に会見を開き、6月に発行した「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版」の内容を説明した。ガイドは、昨年改訂された「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」(GL)に沿って、実地医家等の臨床医や管理栄養士・栄養士、保健師などのメディカルスタッフ向けに分かりやすく解説したもの(GLの詳細はhttps://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?page=1&id=7365)。「動脈硬化性疾患予防のための包括的管理」「動脈硬化の臨床診断法」「脂質異常症のアセスメント」「管理目標値」「専門医への紹介」など22章で構成している。
ガイドには、「中性脂肪が500mg/dL以上の場合には急性膵炎の発症リスクが高いため、食事指導とともに薬物療法を考慮する」との記載や「脂質異常症治療薬の特性と副作用」といったGLには記載のない内容も盛り込んだ。
説明した荒井秀典氏(国立長寿医療研究センター病院長)は、LDL-Cの測定法に関してGLで「Friedewaldの式または直接法で算出する」と並列した理由について、測定キットの質が向上したことや、特定健診の際に直接法を用いる医師が多いことを挙げた。一方で、今までの疫学研究はすべてF式を用いていることから、「直接法と計算式を比較すると微妙にずれる。原則としてはF式を使ってほしいというのが学会の考えではある」と述べた。
荒井氏は、今回のGLやガイドでは吹田スコア(大阪府・吹田研究)を動脈硬化性疾患の絶対リスク予測ツールに用いているとし、次の改訂では全国の日本人の大規模なデータで示したいとした。また、現時点では不足している75歳以上の高齢者におけるエビデンスを構築し、ガイドに反映させることに意欲を見せた。